<新聞に対する税制>欧州各国の現状 言論多様性を重視、「活字」の税率に配慮
野田政権は5%の消費税率を15年10月に10%へ引き上げることを柱とする税と社会保障の一体改革を進めている。税率アップに際し財務省などは「混乱を招く」として、2通り以上の税率を設ける複数税率の採用には消極的だ。しかし、世界各国では複数税率が主流で、「民主主義の維持」「言論の多様性確保」という観点から活字メディアの税率を低く抑えている国が大半だ。消費税に相当する付加価値税を導入している欧州29カ国の新聞への税率を見ると、英国など5カ国がゼロとし、フランスなど20カ国は軽減している。新聞に対する税制を欧州を中心に報告する。【吉田啓志】
◆ドイツ
◇市民の教養「国家が責任」
付加価値税が1968年に導入された際の標準税率は10%。新聞は5%でスタートし、83年に7%となった。だが、標準税率が19%にアップした07年も新聞は7%で据え置かれた。10年には財務省が新聞の税率見直しに動いたのに対し、政権は7%の維持を決めた。
ナチス時代への反省も踏まえ、国民には「市民の教養に国家が責任を持つ」との共通認識がある。新聞の税率を抑えていることと、大学の大半が公立で授業料無料という政策は同根という。憲法やメディア法が専門で、ドイツとの比較研究をしている大阪大の鈴木秀美教授は「軽減税率対象リストを作った時の立法資料を調べると、食料と出版物は軽減税率を適用するための積極的理由付けをしておらず、適用が当然視されていた」と指摘する。
また、ドイツは新聞の定価販売(再販売価格維持)を競争制限禁止法の適用除外としている。出版物の販売に関しては、全国を80地区に分けていて「1地区1卸業者」が基本。卸業者は地区での独占権を与えられる代わり、全商品を消費者に届ける義務を負う。また言論の多様性を守るため、新聞には特別に厳しい合併規制がある。
◆フランス
◇食品より低率、直接助成も
標準税率19・6%に対し、2・1%と5・5%の軽減税率があり、新聞には2・1%が適用されている。付加価値税導入は68年で、新聞は77年以降に今の税率となっている。
イギリス同様、メディアへの優遇税制は民主化の歩みと軌を一にしている。1881年、フランス革命の人権宣言などを基に「出版自由法」が制定された。活字メディアは手厚く保護されており、新聞の税率は5・5%の食料品より低く、国の補助金による直接助成もある。
日本新聞協会の視察団に対し、文化・通信省の参事官は「自由の国フランスでは政府が活字メディアを支援することは当然視されている。歴史的、文化的遺産として根付いている」と明言している。
どの新聞が軽減税率の対象となるかは、行政機関、業界専門家らで構成する、独立性の高い審査委員会の承認が必要だ。
委員会は「最低3カ月に1回発行」「広告が紙面の3分の2を超えない」などを条件に挙げている。ただし、記事の内容は問われない。
◆カナダなど
◇複数州でゼロ税率適用
日本の民主党が税制改革のモデルとするカナダは、複数の州が新聞をゼロ税率(連邦分は標準税率の5%)としている。年間所得が約3万2500カナダドル(約250万円)以下の世帯(夫婦と子ども2人)の食料費など基礎的な生活支出額を調べ、そうした世帯に家族全員が負担する消費税分(大人1人につき約250カナダドル=約1万9000円)を還付する「給付付き税額控除」も導入して軽減税率と組み合わせている。
米国では、50州のうち物品やサービスにかかる「売上税」を新聞に課しているのは7州。29州は非課税で、9州が条件付き非課税(5州は売上税がない)。
また韓国も、標準税率が10%ながら、77年の付加価値税導入時から新聞は免税されている。欧州では標準税率のインターネット新聞も、免税対象となっている。
◆イギリス
◇「知識は非課税」原則確立
付加価値税の導入は73年。標準税率10%でスタートしたが、当初から新聞はゼロ税率だった。11年1月、標準税率が17・5%から20%に引き上げられた時も新聞や書籍、食料品などは0%のままだった。欧州連合(EU)は77年の指令で、加盟国の最低税率を5%と定めたものの、それ以前からゼロ税率があったために0%が認められている。他に5%の軽減税率がある。
英政府は1694年、印刷物に課税する印紙税法を制定。出版物の価格を上げ、売れないようにすることを狙った事実上の言論統制だった。これに英国新聞協会は反対し続け、1855年、同法は廃止される。こうした歴史的経緯から、「知識には課税しない」との原則が確立している。
90年代に入り、財政危機の影響で数回浮上した新聞の税率引き上げ案もその都度見送られた。「国民の知る権利を守り、民主主義の維持に欠かせない」として新聞へのゼロ税率適用が続いている。
◆スウェーデン
◇制作・配達に国庫補助も
69年の付加価値税導入時、標準税率は11・1%で新聞はゼロ税率だった。その後、財政赤字が続き、90年には標準税率が今の25%に引き上げられ、新聞も96年から6%となっている。6%の税率は、映画、スポーツの入場料などにも適用されている。03年まで25%だった雑誌や書籍も6%に軽減された。他に12%の軽減税率があり、食料品、ホテルの部屋代などが対象となっている。
財務省によると、新聞業界が6%の税率で負担している税コストは日本円で年間約41億6000万円。標準税率の25%を適用されると約195億円の追加負担が生じるといい、文化省幹部は「新聞は特別扱い」としている。
その理由はやはり「民主主義の維持」だ。朝刊紙の95%が定期購読され、普及率も高い。さらに軽減税率以外にも、新聞の制作費、配送費に対する国庫補助がある。09年時点で制作助成を受けているのが84紙、配達助成は137紙で、助成総額は約74億円に上る。
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