大阪の街の奥深さや文化を紹介し、87年の歴史がある老舗雑誌「大阪人」が廃刊・縮小の危機にあることが28日、分かった。大阪市の外郭団体で発行元の大阪市都市工学情報センターが、編集実務を担当している会社に対して、新年度の契約を更新しないことを通告した。
関係者によると、同誌は、平松邦夫・前大阪市長の特別顧問を務めた内田樹・神戸女学院大名誉教授や宗教学者らを編集委員に迎え、同センターからの年間委託料約8400万円(うち市からの助成金約2300万円)で隔月で発行。今月24日、同センターの担当者が、編集実務をしている会社「140B」(同市北区)を訪れ、契約について「更新しないことを決定した」との文書を手渡した。広告収入の不振などを理由に挙げたという。
橋下徹市長は現在、文化行政全体の見直しを進めている。
「140B」の中島淳社長(53)は「戦前からのバトンを引き継ぎ、配本部数は従来の6000部程度が今は1万部を超えているのに残念だ。大阪市を好きになってもらえる雑誌なのに、もし廃刊になれば惜しい」と話す。
「大阪人」は1925年、大阪市の財団法人の機関誌として創刊された「大大阪(だいおおさか)」がルーツで、戦後の47年に現在の題名で再スタートした。「鉄道王国・大阪」を取り上げた今年1月号は雑誌としては異例の増刷がかかる人気だった。【鶴谷真、熊谷豪】
毎日新聞 2012年1月29日 大阪朝刊