六ケ所村:溶融炉に不具合 核燃料再処理工場

2012年1月30日 21時7分 更新:1月30日 23時53分

ガラス溶融炉の不具合について説明する日本原燃の川井吉彦社長=青森市内のホテルで2012年1月30日、吉田勝撮影
ガラス溶融炉の不具合について説明する日本原燃の川井吉彦社長=青森市内のホテルで2012年1月30日、吉田勝撮影

 青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で、高レベル放射性廃液とガラスを混ぜて溶かす溶融炉に不具合が生じ、稼働試験の準備作業が中断していることが30日分かった。日本原燃の川井吉彦社長が同日の定例記者会見で明らかにした。試験は相次ぐトラブルで08年12月に中断。種々の対策を講じ、今月24日に試験再開に向けた炉の確認作業に着手したばかりだった。原因不明で復旧のめどは立っていない。国の核燃料サイクル政策見直しの動きに影響しかねない事態となっている。

 川井社長によると、4年前にトラブルが起きた「A系」とは別の試験使用歴のない「B系」の溶融炉を使用。24日に放射性物質を含まない試験用の「模擬廃液」とガラスを混ぜたビーズを炉で溶かし処分容器に流下させる作業を始めたところ、流下速度が徐々に落ちた。作業を3回中断して炉にかくはん棒を入れ、回復を試みたが、不具合は解消していない。流下するガラスに含まれるはずのない数ミリ大の黒い異物が混入していることも判明。いずれも原因は分からず、試験再開のめどは立っていない。

 川井社長は「しばらく回復作業を続け、回復と原因究明に慎重に当たりたい」と説明。一方で、2月上旬に予定する試験再開や今年10月完工の計画は「目標を変えることなく努力したい」とし、現時点で炉を止めて検証する考えはないことを強調した。核燃料サイクル見直し論への影響には「無理せず、慎重に作業を進めることが必要で、議論を進める上でもご理解いただきたい」と述べた。

 08年のトラブルの反省から、同社は茨城県で実物同様の試験炉で実験を繰り返し、炉内の温度計増設など装置や運転方法の改善に腐心。福島第1原発事故後の安全対策を11年12月、三村申吾青森県知事が了承したことを受け、満を持して試験に臨んだ。一方で、川井社長は同10月、再処理工場を現時点で閉鎖した場合、これまでの建設費約2.2兆円に加えて解体などに約1.4兆円もの費用がかかるとの試算結果を公表し、埋設処分と比較して「サイクル事業は環境保全の面からも必要」と述べるなど、核燃料サイクル政策の見直しを強くけん制してきた。【山本佳孝】

 ◇核燃料サイクル

 原発で使われた使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す再処理をして、再び原発の燃料として使う流れ。再処理後に使えず高い放射能を帯びたものは、ガラスと混ぜて固め、高レベル廃棄物として地中に処分する。処分先は決まっていない。再処理工場で取り出されたプルトニウムとウランを、原発より効率的に発電する高速増殖炉への活用計画も進められている。

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