税金とは

国や地方公共団体は、その構成員である国民や住民に多くの公共サービスを提供しています。
例えば防衛・警察や消防、社会保険、福祉、子供の教育や老人介護などのサービスにより安全で
健康的な生活が保障され道路建設、上下水道、防災環境の整備といった公共事業により、快適な
暮らしを享受することができます。

つまり、税金は、国や地方公共団体が公共サービスを提供するのに必要な経費について、
国民や住民の負担を求めるもの(お金)ということができます。

納税の義務

国や地方公共団体が税金を徴収できる根拠は、日本国憲法の第30条にあります。
これには、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」と規定されています。法律に
よらずに国や地方公共団体が、そのときの都合や思いつきで恣意的に負担を求めることはありま
せんが、 法律によって負担を求められれば、納税の義務を負わなければなりません。

国民が納税の義務を負うという憲法の規定は、国が存在する上で税金は欠くことのできない
ものの一つであることを示しています。


税金の役割

1.公共サービスの資金の調達

私たちの毎日の生活は、国や地方公共団体の活動と密接に結びついており、その公共サー
ビスによって支えられています。これらの活動やサービスを行うための資金は、大部分が国民
が納める税金でまかなわれています。
いいかえれば、公共サービスの資金を調達することが、 税金の最も直接的で、かつ重要な役
割であると言えます。

2.所得の再分配

税の支払い能力という点ではすべての人が同じであるわけではありません。所得や資産など
の負担能力の大きい人には余分に税を負担してもらい、負担能力の小さい人には税を少なく
(あるいは免除)すると共に、社会保障を厚くして国民の間の富の格差を縮め、社会の安定化
を図るという考えがでてきます。
このように税を利用して、所得や資産の再分配を図ることが行われています。

3.景気の調整

好況期には所得が増えることで税収も増加し、 逆に不況期には所得が減ることで税収も減少
するので、民間の需要を自動的に調節する働きを持っています。
これを自動調節機能(ビルトイン・スタビライザー)といいます。
また、政府により景気調節のために景気後退時に減税、 景気過熱時には増税という手段が
とられることがあります。

税金の原則

税金を納めることが国民の義務である以上、その課税方法は国民に広く理解されなければ
なりません。
税金の原則については、昔から多くの学者たちによって研究されてきましたが、代表的なもの
として以下があげられます。

アダム・スミスの4原則
国富論
1公平の原則   2明確の原則
3便宜の原則   4最小徴税費の原則
ワグナーの4大原則9原則
財政学
1財政政策上の原則
2国民経済上の原則
3公正の原則
4税務行政上の原則
課税の十分性 ・課税の弾力性
正しい税源の選択 ・正しい税種の選択
課税の普遍性 ・課税の公平
課税の明確性 ・課税の便宜性 ・最小徴税費
への努力
マスグレイブの6原則
財政−その理論と実際
1公平 2中立性、効率性 3政策手段としての租税政策と公平性との
調整 4経済の安定と成長 5明確性 6費用最小

3人の学者の考え方は、それぞれの時代の経済・社会情勢を反映して表現は変わっていますが、
税負担の公平、経済への中立、制度の簡素さといった基本的な諸要素において相通じていると考
えることができます。

1.税負担の公平

特定の人が有利になったり、不利になったりしない公平な課税でなくてはならない。 公平に
ついては、垂直的公平と水平的公平がある。
税負担の公平という場合に、大きな経済力を持つ人はより多くの税金を負担すべきだという
のが「垂直的公平」。経済力にかかわりなく、支払い能力がある人は等しい金額を負担すべ
きだというのが「水平的公平」。

2.経済への中立

税制で特定の企業や個人に対して特に重い税負担を求めたり、減税したりすることを極力避
け、民間の経済活動に対して中立を保つべきだとする考え方。

3.制度の簡素さ

誰にでもすぐにわかり、また経費がかからない方法で徴収されなくてはならないとする考え方。


租税法律主義

・憲法第84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定
 める条件によることを必要とする」としています。これは、その課税の主体、納税義務者、課税
 標準、税率、課税要件、非課税要件、免税要件、収納のための手続き規定は、法律をもって
 定められなければならないということです。
 このように、国や地方公共団体が税金を課し、収納するための規定は、すべて法律をもって定
 められなければならないという考え方を「租税法律主義」といいます。

・国税を規定する法律は、国税についての基本的・共通的な事項を定めた国税通則法を基本に、国
 税全般に通じる国税徴収法及び国税犯則取締法と、それぞれの税目について、納税義務者や課税
 物件などの課税実体を具体的に定めた各個別法(所得税法、法人税法、相続税法など)、租税特別
 措置法などから成り立っています。

・又課税・徴収という行政行為は、経済や社会活動と複雑にかかわりあっているために、法律
 だけで規定するのは困難となります。そこで、これら税法だけでは網羅できない事項に関して
 は、内閣が制定する政令や大蔵大臣が制定する省令によって規定しています。
 政令や省令は法律と同じ国の規制であり、法律と同じように守られなければなりません。法律
 と政令・省令を合わせて法令とよびます。

・このほかに、国税庁が法律の解釈・運用の統一を図るために下級行政機関である国税局や税務署
 に対する「通達」があります。これは税務職員に対して、税法をどう解釈し運用するかを示した指示に
 すぎず、法令ではありませんが、事実上法令と同じように拘束力をもつものとなっています。

・一方、地方税については、地方税法という1つの法律にまとめられており、地方公共団体が
 法律の範囲内で制定する条例などにより、それぞれの実情に応じた独自の定めもあります。

・以上のように、税金は法令などにより明確かつ詳細に規定されることで、国や地方公共団体がその
 ときの都合や思いつきで課税、徴収することなく、すべての国民が等しく納税の義務を負うことになり
 ます。