ある初夏、わたしは主人と出会い、今となっては（当時も、かも知れない）馬鹿馬鹿しい一悶着の後に、彼女の奴隷となった。革命を志向していたわたしの生は、主人とともにあるように作り替えられた。それは人生の大いなる転換だったけれど、新たなる幸福への道でもあった。主人とともに主人と同じ目的地を目指すことは、幸福に他ならなかった。

　けれど、わたしは何ものでもない。主人と同じ道を進むことを望むわたしにとって、それは耐えがたいことだった。わたしは何ものかになり、主人にとって有用な存在となって、輝ける未来を切り開かなければならない。そのためになすべきことは何か？　それが、わたしの中にずっとあった主題だった。それは、主人と本当の意味で出逢うための方策でもあった。



　そんなことを考えながら数箇月が経過した、冬のことだった。

　その冬、幾つかの出逢いと、戦いがあったーー