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きょうの社説 2012年1月29日
◎香林坊と武蔵の連携 競合乗り越え複合の魅力を
金沢市の中心部で「香林坊・武蔵地区まちづくり連携実行委員会」が発足した。互いに
集客を競ってきた香林坊、武蔵両地区の商業者が長年の競合関係を乗り越えて連携の組織をつくるのは画期的な取り組みである。香林坊、武蔵両地区にはファッションや食などで特徴のある店が集まっており、イベン トや街づくりで協力すれば相乗効果が期待できる。毎年夏に片町―武蔵間の国道157号を歩行者天国にして行われる「金沢ゆめ街道」のにぎわいは連携の効果が大きいことを示唆している。金沢が都市間競争に打ち勝つためにも、両地区は活動の具体化を進め、中心部に複合の魅力を積み上げてほしい。 香林坊地区と武蔵地区の二極が並ぶ金沢中心部では、郊外の大型店進出に対抗した際の 取り組みもそれぞれの地区の中にとどまり、垣根を超えた連携は本格化しなかった。街づくり機関(TMO)である金沢商業活性化センターが14年前に発足したころも、事業構想は香林坊と武蔵の二本立てになっていた。その両地区が手を結んで組織をつくる動きには隔世の感がある。金沢駅周辺に競争相手が出現して環境が変化したことに加え、3年後の北陸新幹線開業に備えるという共通課題が両地区の商業者を動かしたようだ。 香林坊地区では、昨年開業した香林坊ラモーダなどの新たな路面店が広域から客を呼び 寄せている。大和やアトリオ、竪町商店街など既存店の集客力も根強い。武蔵地区には近江町市場や、めいてつ・エムザという核がある。とはいえ、今後も単独でにぎわいづくりを進めるより、ブランド集積が進む香林坊と組んで人を呼び込む方が金沢の魅力と競争力の向上につながるであろう。 2月からは、両地区で別々に運営されてきた駐車料金割引サービスの統合が実現する。 協調の機運を生かして点と点のにぎわいを面に広げていくには、香林坊と武蔵の間に連続性を持たせることも課題になる。両地区の中間にあるオフィス街にも魅力がいるであろう。メーンストリートだけでなく、いわゆる裏通りや路地に両地区を歩いて行き来したくなる仕掛けを展開するという手もある。
◎北陸の「美食」発信 味わい深い食文化伝えて
北陸新幹線金沢開業を見据えて、北陸ならではの「美食」のブランド化を目指す取り組
みが広がっている。七尾市と富山県の「すし」や加賀市の「天然カモ」などで、評価の高い地元の食を発信して誘客につなげる狙いがある。これらの食に関しては、優れた食材や料理人の技をはじめ、恵みをもたらす日本海や伝 統的な猟法などの興味深い話題も多い。それらを合わせて知ってもらうことで、食の味わいがより深まるだろう。地域の豊かな食文化を伝えて、北陸の魅力を高めてもらいたい。 すしについては、七尾市観光協会が「すし王国能登七尾」、富山県が「富山湾鮨(すし )」と銘打って、地元のすしのブランド化を進めている。富山はキャンペーンの参加店が地元産品を活用したセットメニューを提供し、県内外で富山湾の旬の味覚を売り込んでいる。七尾も地物にこだわった各店共通メニューづくりに乗り出し、首都圏への発信を強化する。 日本海の魚介のおいしさは定評があり、さらに、すしを切り口にして、コメや水、しょ うゆ、日本酒などの多彩な地元産品の良さや伝統などを広く紹介する機会にもなる。「すしどころ」としても知られる金沢を含めて、ブランド化の相乗効果で北陸への注目度が増すことを期待したい。 和食の世界的なブームの中で、すしの人気はとりわけ高い。日本政府観光局が2009 年に行った調査でも、日本を訪れた外国人旅行者が満足したメニューのトップは「すし」だった。北陸のすし巡りは、海外誘客の面でも魅力のあるセールスポイントとなるだろう。 天然カモについては、加賀市ブランド推進協議会が「坂網鴨(さかあみがも)」として 、知名度を高めようとしている。先日の食談会では、同市(旧山中町)出身の料理人道場六三郎氏が腕をふるった。「坂網鴨」はラムサール条約登録の片野鴨池周辺で行われる県有形民俗文化財の「坂網猟」によって捕獲されたカモで、希少性が高い。カモの味わいとともに、藩政期から続く自然と人との共生の歩みも多くの人に伝える価値がある。
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