きょうの社説 2012年1月27日

◎米がインフレ目標 歴史的な一歩、日銀も追随を
 歴史的な一歩といえるだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)が「長期の目標および 政策戦略」に関する声明で、2%のインフレ目標を導入すると発表した。インフレ目標政策は、欧州中央銀行(ECB)をはじめ、イギリス、カナダ、オーストラリアなど多くの先進国で導入されているが、米国と日本はこれまで採用に慎重だった。

 事実上、雇用とインフレの両方に責任を負っているFRBがインフレ目標を導入したの は、バーナンキ議長の強い意向だったという。米国経済の先行きに強い懸念を抱き、大胆な方針転換に打って出たトップの決断を評価したい。

 インフレ目標は、先進国のなかでは、ごく標準的な金融政策の枠組であり、米国以上に デフレが深刻な日本でこそ必要な政策だ。日銀は「効果がない」「ハイパーインフレを招く」などの理由で、インフレ目標の導入に否定的だが、「効果がない」と言うのは、インフレ目標を導入している多くの国に対して失礼だろう。スウェーデン、ニュージーランドなどは一時的なデフレをインフレ目標の導入で克服したとされている。

 OECD諸国で唯一、デフレに陥っている日本にとって、適度なインフレは望ましいは ずなのに、巨額の政府債務を気にしてハイパーインフレを恐れる発想は理解し難い。日銀もインフレ目標の採用に踏み切る潮時である。

 現状のままデフレを放置していれば、「超超円高」はいつまでたっても解消されない。 日本経済を支えてきた製造業は、耐えかねて海外移転に活路を見い出そうとしている。国内産業の空洞化は、財政赤字以上に危険であり、日本経済を細らせる。米国にならってインフレ目標を導入し、1年半から2年程度の期間を設け、2〜3%のインフレ目標を設定し、その達成に全力を挙げてほしい。

 日銀の使命はもとより、「物価の安定」(日銀法第2条)にある。インフレ目標は、こ れに反しているという指摘もあるが、だからと言ってデフレに何の手も打たないで良いわけがない。インフレ目標の導入と効果的な運用に支障があるというなら、日銀法を改正してはどうだろう。

◎高齢者の免許返納 増加に応える支援充実を
 北陸で運転免許証を自主的に返納する高齢者が増えている。石川、富山県ともに昨年の 65歳以上の返納者が年間で過去最多に上り、返納者に対する自治体の支援事業の広がりがうかがえる。

 運転能力に関しては個人差が大きいが、全国的に交通事故死者が減少する中、高齢ドラ イバーが「加害者」となるケースが増えている。高齢者の事故対策が大きな課題となっている中で、買い物や通院などの「生活の足」に車が欠かせないという高齢者も多く、免許返納の取り組みは、公共交通網の整備とともに、「買い物弱者」対策などの幅広い高齢者支援と密接に関係している。車がなくても生活しやすいように、行政と地域社会できめ細かく支える仕組みを整えていきたい。

 昨年の石川県内の65歳以上の自主返納者は535人で、6年連続で過去最多を更新し た。富山県は昨年11月末時点で年間最多の1446人に上り、6年前の18倍超になっている。返納を後押ししているとみられる自治体の支援事業は、身分証明書に使える住民基本台帳カードの無料発行や、バスや電車などの公共交通機関の乗車料助成などがあり、支援の取り組みが広がっている。

 2006年から返納支援事業を始めた富山市の場合は、電車などを利用する際のカード や乗車券のほか、公共交通が整備されていない地域の要望を受けて、タクシー利用券も加えた。それらの支援を受けた高齢者は昨年4月から11月末までに443人に上っている。

 金沢市も今年度から5年間の市交通安全計画の中で、高齢者が免許を返納しやすい環境 を整えることを掲げており、各自治体が支援策の周知を図るとともに高齢者の視点に立って、効果的な対策を進めてほしい。

 高齢者支援は行政だけではなく、地域社会の相互扶助がますます重要になっている。一 人暮らしの高齢者も増えている中で、住民やボランティア、NPO法人などによる見守り活動や買い物弱者対策などもさらに力を入れてもらいたい。