なぜ相次ぐ? 携帯の通信障害

清有美子記者

大事な用件が伝わらず困った方も多かったのではないでしょうか。
今月25日、NTTドコモの携帯電話で4時間半にわたって通話やメールができなくなるなどの通信トラブルが起きました。
背景には急速に普及が進むスマートフォンがあります。
なぜトラブルが相次いでいるのか。
経済部の清有美子記者がその原因を探ります。

電話が通じない!

報道の現場で働く記者に『7つ道具』があるとすれば、私にとって最も重要なものは携帯電話です。
速報が必要な重要な発表の連絡や原稿の送信。
携帯電話は手放せないツールです。
今月25日の午前10時ごろ。
「NTTドコモの携帯電話がつながならい。トラブルが起きているのではないか」。
私は情報の確認のために携帯電話でNTTドコモに電話を入れようとしました。
しかし、肝心の携帯電話がつながらない・・・。
私は急いで東京の大手町にある取材拠点に急ぎ、固定の電話で取材を開始しました。

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何が起きたのか

その日、東京都内では何が起きていたのでしょうか。
障害が発生したのは25日の午前8時半ごろ。
千代田区や港区、それに新宿区など都心の14の区でNTTドコモの携帯電話で通話やメールがつながりにくくなりました。
このとき、都心のオフィス街では連絡手段を確保するため公衆電話を探し求める人の姿も見られました。
つながりにくい状態は少しづつ緩和して行きましたが、完全に復旧したのは25日の午後1時すぎ。
トラブル発生から4時間半が経過していました。
影響を受けたのは携帯電話の利用者だけではありません。
通信会社の通信網は、電話だけではなくクレジットカードの決済や商品の発注など通信が必要なさまざまなものに使われているからです。
東京都内で営業しているタクシーの中には、客の支払いがクレジットカードでできなくなったケースもありました。

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影響を受けた利用者は最大で252万人に上るとみられています。

相次ぐ通信トラブル

通信会社の間では、このところ、トラブルや通信障害などが相次いでいます。
NTTドコモでは、先月、スマートフォン向けのインターネット接続サービス「spモード」で、メールアドレスが勝手に別の人のものに置き換わるなどのトラブルが発生。
関西を中心におよそ2万人に影響が出るなど、この半年余りの間で5件のトラブルが起きています。

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トラブルの背景にあるもの

相次ぐトラブルの背景にあるのが急速に普及が進むスマートフォンです。
平成23年度のスマートフォンの出荷台数は2000万台を超え、携帯電話全体に占める割合は半数を超えるとみられています。
スマートフォンは、インターネットやゲームを気軽に楽しめる一方、データ通信量はこれまでの携帯電話に比べて10倍程度と言われています。
スマートフォンの普及に伴う通信量の増加に対応するため、通信各社は設備を増強するなどの対策を進めています。
NTTドコモの今回のトラブルは、まさにデータ通信量の増加に対応する対策を進めるなかで起きました。

“甘い”見積もり

今回のトラブルはなぜ起きたのでしょうか。
携帯電話の通信ネットワークはさまざまな通信設備で構成されています。
このうち、今回、問題となったのが「パケット交換機」と呼ばれる設備です。
この「パケット交換機」ではインターネット上のデータなどがやりとりされています。

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今回、古い型から新しいものに切り替える過程でトラブルが起きました。
スマートフォンは、データ通信のやりとりを頻繁に行っていますが、今回、この通信量を低く見積もっていたためにシステムが対応できなかったのです。

“行政指導”と“陳謝”

「一連のトラブルは、スマートフォンが増加するなかで適切な措置が十分に取られていなかったために発生したものだ」。
一連のトラブルを受けて総務省はNTTドコモに対して、26日、再発防止策を早急に実施することを求める行政指導を行いました。
これに対して、NTTドコモは、27日、山田社長ら6人の役員の報酬を減額する処分を行うと発表。
あわせて再発防止のため、今後3年間に新たにおよそ500億円を投じて通信設備を増強することを明らかにしました。

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今回の事態が問うもの

通信各社は、携帯電話の契約者数が頭打ちとなるなか、新たな収益の柱としてスマートフォンの販売に力を入れてきました。
しかし、携帯電話と比べて通信量が格段に多いスマートフォンの普及は、同時にそれに見合った通信インフラをどう整備していくかという課題を突きつけています。
「この2〜3年、急激にスマートフォンが増え、ドコモだけでなく、ほかの携帯電話会社でも通信障害が起こる可能性がある。強い通信インフラを作るところにもう少し力を割いていただくべきだ」。
今回の事態について、専門家はこう指摘しています。

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今回の事態は、通信会社がスマートフォンの販売に力を入れる一方で、それに見合った通信インフラの整備が後手に回っている現状を浮き彫りにしました。
1人に1台は携帯電話を持っていると言われる時代。
携帯電話は人々の生活に深く関わり、災害の際には命を守る役割も期待されているだけに通信会社は徹底した対策が求められています。

(1月27日 21:45更新)

WEB特集 1月27日(金)

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