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2012年1月8日1時1分

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育児・教育「運動化」はダメ 尾木直樹さんインタビュー

写真:尾木直樹さん:尾木直樹さん拡大尾木直樹さん

 「尾木ママ」としてテレビなどで引っ張りだこの教育評論家・尾木直樹さん。埼玉県の教育や子育ての環境についてどう思っているのか、聞いてみました。

 ――埼玉との接点は

 近いので、PTA連合会や青年会議所などに招かれて、講演やトークショーでよくうかがいますよ。教育や子育てでは厳しい環境ですね。幼児虐待や、子どもに関する問題をよく耳にします。2002年に狭山市で起きた保育所長の焼身自殺には衝撃を受けて、保育所の現状を調査しなきゃと思ったんです。

 行政にも問題が多い印象があります。教師の不祥事対策で、懲戒処分でいくら減給するかを示した県教委のパンフレットについて、「お金の問題か」と当時は痛烈に批判しました。

 ――全国に先駆けて実施した「業者テスト追放」など、曲折した公立高校の入試改革は元に戻った感じもします

 そもそも、高校入試がある国は少ないの。中等教育といえば思春期の6年間でワンセット。学力だけでなく、人格の発達をどう保障するのかを考える時期に高校入試をやって、自己肯定感がストーンと落ちる経験をさせるでしょ。

 国際調査で日本の子どもの自己肯定感は他国と比べて低すぎます。東大生だって低いんですよ。自分に自信が持てないと、難しい問題や課題に挑戦する意欲を持てない。人に優しくできない。自己肯定感は生きていく原点で、それを育むのが子育ての柱の一つです。

 ――子育てといえば、埼玉県では「親の学習」に力を入れていますが

 私のブログに育児の悩みが書き込まれますが、昔なら井戸端会議で解消されていたような悩みばかり。地域の共同体が崩壊したと実感します。周囲の環境を変えずに親だけで育児をするのは、もはや不可能です。

 育児や教育は「運動化」してはダメ。「あいさつ運動」とか「早寝早起き朝ご飯運動」とか、大っ嫌いなの。でも埼玉は先頭を走るぐらい盛んですよ。

 運動にすると数値目標を掲げて競い合ってしまう。入ってこない親を冷たい目で見る地域ができるわけ。朝ご飯を食べさせたくてもできずにつらい思いをしている親を、支援や労働環境の整備抜きに悪者にしてしまう。

 学校であいさつしないでうつむいて通り過ぎる子がいたら、「どうしたの」と聞けばいいの。会話の中から実情が見えてくるでしょ。もし、その場であいさつさせて、「全員できた」と喜んでいたとしたら、あまりに表面的すぎますよね。一番大事なのは、素のままの子どもを受け止められる地域や親になることなんです。(聞き手:さいたま総局・帯金真弓)

 おぎ・なおき 1947年滋賀県生まれ。中学・高校の教員を経て、臨床教育研究所「虹」を設立。法政大キャリアデザイン学部教授。

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