(続)大阪府と大阪市の借金残高について 「実質公債費比率について」



橋下知事のメッセージ

 5月10日、この「知事の主張」において、「大阪府が努力できる範囲の借金残高は減っている」「『臨時財政対策債』は、大阪府の努力では減らすことができない借金である」ということを説明させていただきました。「臨時財政対策債」は、本来、国が交付税として配分すべき額を、一旦、地方自治体の借金で賄わせておいて、その返済額を後年度の交付税の計算で算入するという制度です。地方自治体の努力ではどうしようもないのです。負担を先送りしていくこのような手法は、大いに問題です。この点については、引き続き、国に対して指摘をしていきます。

 今回は、地方自治体の借金状況を示す指標である「実質公債費比率」に関する私の考え方を述べたいと思います。

実質公債費比率について


 平松大阪市長は5月11日の記者会見で、この「実質公債費比率」を挙げて、「大阪府の実質公債費比率は悪化している。一方で、大阪市は好転している。だから、大阪市の方が改革が進んでいる。」と説明されていました。「実質公債費比率」と言っても、府民の皆さんにとっては、あまり馴染みのない言葉だと思いますので、少し説明をさせていただきます。

 「実質公債費比率」とは、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(いわゆる財政健全化法)で規定されている、地方公共団体の財政状況を示す4つの指標のうちのひとつで、簡単に説明すると、「各自治体の財政規模に対する公債費(毎年の借金の返済額)の割合(の3か年平均)」です。この数値が大きいほど、財政運営が厳しい、借金の返済に追われているということになります。

大阪府の実質公債費比率が悪化している理由について


 現在の実質公債費比率は、私や平松市長が就任する前に行われた過去の多額の借金の影響を大きく受けます。大阪府は、過去に景気対策などで大量に発行した府債(借金)に対して、今後、多額の返済を行っていかなければなりません。そのため、実質公債費比率は、景気対策期に大量発行した府債(借金)の返済が完了するまでは、これから、ますます大きくなっていくという構造的な課題を抱えています。

 具体的に説明させていただきます。大阪府の平成21年度の実質公債費比率は17.2%ですが、平松市長が指摘されているように、平成20年度の16.6%より悪化しています。現在の試算では、今後、更に大きくなり、このまま何も対策を講じなければ、平成29年度には、25%を超え、財政健全化法で府民サービスの提供に制約が課せられる財政健全化団体に転落してしまいます。
今後の財政収支の見通し〔粗い試算〕23年2月版P5参照 [PowerPointファイル/363KB]    [PDFファイル/298KB]

 また、実質公債費比率の算定にあたっては、借金返済の原資を確保するための「減債基金(注)」の積み立て状況も加味されます。私が知事に就任する以前は、厳しい財政運営の中で、将来の返済のために蓄えてきた減債基金の資金から借り入れをすることで、歳入不足を補ってきました。そのため、減債基金の残高が、本来必要とされる額を大きく下回っています。大阪府の場合は、この点も実質公債費比率を押し上げる要因となっています。

3年間の私の取組み


 私は、なんとか、この実質公債費比率が将来にわたって25%を超えることがないよう、この3年間、必死で府財政の改革を進めてきました。
知事に就任直後から、借金をして将来世代へ負担を先送りにするというこれまでの手法から決別し、「収入の範囲内で予算を組む」という方針を徹底し、歳出の削減や歳入確保の努力により、新たな借金を抑制してきました。その中で、減債基金への返済も計画的に進めることとし、平成21年度には、初めて約52億円の返済を行いました。その後、平成22年度までに、約820億円の返済を行いました。

 このように、実質公債費比率は過去の借金額によって影響を受けるものであり、現在の改革が進んでいるか否かをただちに反映するものではありません。
現在の大阪府の実質公債費比率は決して誇れるものではありませんが、私としては、その上昇を少しでも抑制できるよう、健全で規律ある財政運営に最大限努力しています。

おわりに


 この間、大阪府と大阪市の借金残高の問題について、いろいろ議論してきましたが、府も市も多額の借金を抱えているのは事実です。ただ、それを互いに批判し合っても府民・市民はシラケてしまうでしょう。それよりも、府と市、広域自治体と基礎自治体の役割分担を明確にし、効率的な行政運営に努め、将来に向けて、大阪全体の借金をどうやって減らしていくかということを考えていくことの方が重要です。平松大阪市長とも、そういった前向きな議論ができればと思っています。

<注釈>
減債基金:
 地方公共団体が行う借金の多くは、満期時に一括して償還するという方式をとっています。
 そのため、満期時に一度に多額の償還財源が必要になり、府債(地方債)の本来の機能である「世代間の公平」を果たせなくなることから、満期日が来るまでの間、一定のルールに基づいて償還財源を積立てる基金を設置し、満期日に備えるようにしています。この基金を減債基金といいます。

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府民文化部 府政情報室 広報広聴グループ

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