田辺三菱製薬(大阪市中央区)の横浜市内の研究所で昨年、劇物の硫酸タリウムが入った茶を同僚に飲ませたとして、神奈川県警は13日、同社研究員の小玉信之容疑者(40)=東京都世田谷区上馬3=を傷害容疑で逮捕した。「同僚と人間関係がうまくいかず困らせようと思った」と容疑を認めているという。
逮捕容疑は、昨年4月27日午後2時半ごろ、同社の横浜事業所(横浜市青葉区)の研究棟で、同僚の男女5人に硫酸タリウムが混ざったウーロン茶を飲ませたとしている。5人は筋肉痛や髪が抜けるなどの中毒症状を訴えたが、現在は回復している。
県警によると、5人と小玉容疑者は新薬を研究開発するグループに所属。ウーロン茶は研究棟であった女性社員の結婚祝いで出された。小玉容疑者は粉末状の硫酸タリウムの小瓶を薬品庫から持ち出し、事件の数日前、水に溶かして研究棟の冷蔵庫にあったウーロン茶のペットボトルに混入したという。
同社広報部は「世間をお騒がせしたことをおわび申し上げます。試薬類の管理強化を図り、同様の問題が起きぬよう努めます」とのコメントを出した。
硫酸タリウムは劇物に指定され、成人の致死量は約1グラム。摂取すると頭痛や下痢などの症状が出る。90年には東大医学部付属の実験施設で、技官が酢酸タリウムの入ったお茶を同僚に飲ませ毒殺。05年にも静岡県伊豆の国市で女子高校生が母親にタリウムを混ぜたお茶を飲ませ、殺害しようとした事件があった。【宗岡敬介、松倉佑輔】
毎日新聞 2012年1月13日 13時42分(最終更新 1月13日 20時27分)