東京電力の「一律値上げ」に異議――1/26の猪瀬東京都副知事の会見速記録
○日時 2012年1月26日(木) 15時10分~15時40分
○場所 猪瀬副知事室
【猪瀬副知事】
東京電力が企業向け電気料金の値上げを一方的に通告してきていますが、東京電力、経済産業大臣、原子力賠償支援機構という三者に対して、電力の値上げはおかしいという石原慎太郎知事名の書面を今日、渡しました。
なぜ、この値上げに対して、問題提起をするか。東京電力は燃料費が高騰したと言っている。東電側の値上げの発表資料を手元にお配りしていると思います。
(東京電力HP http://www.tepco.co.jp/cc/press/12011702-j.html )
燃料費が高騰して2008年度には2兆3700億円だったが、12年度に3兆500億円になる。つまり6800億円も燃料代が上がるので、したがって値上げをさせてください、という話ですね。もちろんまだ家庭用の話ではなくて、産業部門の話です。
6800億円も燃料代が上がるというので、ああそうか、あのLNGや石油火力は大変だな、と思いきやですね、この燃料費の内訳として注記があり、「火力燃料費」、「核燃料費」、それから「購入電力料」、これは、よその電力事業者から買ったものですね、「等」と書いてあり、6800億円の内訳がない。しかも、核燃料費まで入っている。6800億円の内訳も明示しない、明らかにしないで、いきなり6800億円分の値上げをします、では納得し難い。
値上げの方法も、今の単価に対して、一律に上乗せする値上げです。例えば、1キロワット時の単価8円で買っている企業があれば、あるいは15円で買っている企業もある。単価8円の人には例えば2円だとか、15円で買っている人には例えば3円だと、こうなっているわけでもない。一律に2円60銭上乗せする。
非常に大雑把で、一律に17%を単純にただ乗せてくるというのも、理解し難い。中小企業に対して、どういうつもりで、これを言っているのかもわからない。例えば中小企業でめっきとか金型の工場では強い電力を使う場合があるが、お構いなしに一律にとりあえず2円60銭上げるということですね。
これから10年かけて2兆6000億円のコストを削減すると東電は昨年末のアクションプランで言っていますが、今回値上げに対応する2012年度分として1900億円を削減すると言うが、どういう中身で削減するか、中身を見せてくれないと、何をどこで、どう削減するのかわからない。
ということで、一つの例として、お示ししたい。ちょっと資料の束を、ここに……。
東電のファミリー企業、つまり子会社ですね、全部調べてみた。都心にたくさんあります。
まずは、公表されている資料から正攻法で行きましょう。有価証券報告書に記載されている東電の連結子会社168社、関連会社97社のうち、住所の記載がある子会社が40社あります。うち都内に本社がある24社のうち、17社が非常に交通至便な場所、港区とか中央区とか、都心5区にあります。
立派な建物がたくさんあるが、家賃が、34億円ぐらいだと、相場で判断します。これはきちんと不動産の賃貸の情報から計算すれば、きちんと整理するとわかります。
例えば、この東電フュエルという東電の燃料調達の会社ですが、これは21階建のビルで東電が一部所有している建物です。現在の都心5区(港区、中央区、千代田区、渋谷区、新宿区)を、例えば整理・統合してスペースを半分にして品川に統合する。それだけで年間家賃は、34億円から14億円に20億円減らすことができる。
つまり、経営合理化と言っても、ふだん、家賃が高いところにいては、これはしょうがない。東電は明細を明らかにしてないが、このぐらいできるはずだと。
もう一つ、この中に所有物件があります。大きく立派な自社ビルか一部所有権を持っているビル、地下に変電所がある場合は売却できないとして、それを除くと、自社ビルは2つ、一部所有権を持つビル1つは、売却できるということで、これを売れば、現在の賃料相場から収益還元法で取引価格を求めると、78億円ぐらいになる。
安い賃料のところに移りなさい、売れる物を売りなさい、こうして子会社の本社ビルを整理すると、あわせて100億円削減できますよと、こういうことを自ら開示して、我われがこういう身を削る努力をしているから、値上げさせてくださいと言うのならわかるが、情報提供もしないで、値上げをすると、これはおかしいじゃないかと。
ほかにも東電の福利厚生部門だけを担当している「東電リビングサービス」という会社が、なぜ六本木の一等地にあるのか。自分達の福利厚生施設を運営する会社ですよ。そんなもん、六本木の一等地にある必要は全くないんで、家賃月830万円を払って、なんで自分たちのファミリー企業の本社を置く必要があるのかっていうことなんです。
じつはこの東電の都心にある子会社というのは、本来だったらあまり必要ない。
これから総合特別事業計画の根拠となる詳細なデータが、もちろんもっと明らかにされなくてはいけない。しかし、値上げをするというのであれば、この経営合理化策の1900億円の根拠を明らかにしなければいけない。
あわせて託送料についても、電力販売価格の3割を占めると言われておりますが、これはPPS、民間の事業者にとっては大変な負担なので、もう少し透明化していただきたい。インバランス料金というのは30分の同時同量の規制ですが、PPSの供給が不足すると、3%超えると罰金のようなお金を東電に取られる、逆に、たくさん供給するとそれはタダで東電に奪われてれてしまう。今回値上げするのであれば明らかにしてくださいと、もう一度釘を刺しておきました。
最後に、東京電力は中小企業に対する愛がないんですね。一律の定額の値上げという、非常に東電はなんか殿様商売で威張っているなと、押し付けるなと。「すみません」ってところがほとんどない。したがって、我われとしては、問題を提起しながら1900億円の中身はなんなのということをさらに詰めていきたいと。
そういうことを、東電からきちんと明らかにしてもらわない限り、「値上げ、ハイハイ」と応じるわけにはいきません。繰り返しますが、東京都は東電から83万キロワットの電力を買っている大口需要者です。それから東京エリアの行政主体としての責任があります。さらに2.7%、第3位の株主である。
こういう立場から、あらためて、今回の値上げに対して、東京電力に明確な情報開示を求めます。詳しい中身を有価証券報告書以上に見えるようにしてもらいたい。非常に有価証券報告書は分かりにくいようになっていて、例えば、40社子会社についてはリストアップされていて、「ほか128社」だとかいう書き方なんだよ。これじゃわかんない。いろんな資産が、たくさん眠っているだろうと。それこそ東電の埋蔵金みたいなものも、ちゃんと明らかにしてもらわないと、簡単に値上げには応じられませんねということであります。以上です。
【記者】
経営合理化によるコストダウン1900億円が、あと燃料費の高騰分の6800億円が、その根拠が示されていないということですよね。東京都として、東電に根拠を示せという伺いをしたうえで、それでも示されないから、自分達で調べられて、っていうことなのかっていう点と、もしそうであるとするならば東電のその体質について、どのように考えられるかっていうのを聞かせていただきたい。
【猪瀬副知事】
これもう再三にわたってですね、東電をここに呼びまして、この事実については、どうなんだといくつか確認はしていきます。していきますが、まぁ東電の情報開示の仕方って非常に小出しでありまして、東電自身が縦割りなので、その東電の中でも、またよくわからないっていう状態があって、基本的には情報開示ができる体質の会社ではないなと思っています。何度もこういう中身については確認を求めてきて、現在のところわかっているところはすべてではない、分からないところの方が多いわけですね。もうひとつなんだっけ。
【記者】
そういった体質が、もし東電にあるとするならば、中小企業の方とか非常に、年間100万円も電気料金上がるわけで、非常に苦しい経営なわけじゃないですが。そういう東電の体質というのを、どのようにお考えですか。
【猪瀬副知事】
だから先ほど、ちらっと言いましたが、一律、中小企業も大企業も、大きな工場も小さな工場も一律、同じ比率で値上げするということですよね。それは、やはり、その個々の契約価格に対応した弾力的な提案ではなくて、押しつけるようなかたちでの提案であると。これは東電の体質ではないでしょうかね。
それから、もう一つ、このいまの産業用の価格を上げると、いずれ家庭用の価格も上げる一つの布石になると思っています。この最初のところで、きちんとした説明を求めておかないと、ずるずる、ずるずる、東電の値上げが、家庭用に波及し、またさらに、産業用でももう一度帰ってくることもあるだろう。きちっと、ある程度、ケジメをつけるということをさせていかないといけない。
【記者】
いつまでとか言うのはとくに、東電側には。要望ということでしたけれど、期限的なものは、あるんですか。
【猪瀬副知事】
いや、とりあえず、すぐ出さなきゃいけないということと、こういう値上げ、だんだんだんだん、認められるような雰囲気になってきつつある。我われは調べているのだから、こういうものが、もっと明らかになって、努力をしたという証拠を見せなさいというかたちで迫っていく。証拠を見せてきてくれない限りは、認めませんよということですから、今度は、球は向こうに投げられているわけなんですね。東電側に球を投げたのですから、東電側が球を返してこなければいけない場面なんです。
【記者】
株主としても、発言権が6月末とかあるかもしれない。場合によって、株主としての発言とか、提案とか、場合によっては、託送の話もこの前ありましたけれど、実際には、いかがですか。
【猪瀬副知事】
6月の株主総会は行きます。この間、橋下大阪市長と合意したことですが、橋下大阪市長は関西電力に行く、で、僕は東京電力に行きます。東京電力は原発事故があり、そして電力供給が非常に不安定であるという状況で、なおかつ東京都も電力供給について、発電と送電を分離したかたちを含めた電力の安定供給について、いろいろ提案をしています。
株主総会で、きちんと提起しようと思っています。株主は70万人いるそうですけどね。70万の株主で、どう問題提起されるかわかりませんが、できるかね。ただ具体的には、原子力賠償機構とも話し合いながら、提案していくことになると思いますね。
【記者】
すみません。先ほど、こういった情報開示がなければ、値上げは納得しがたいとか、認めないというお話がありましたが、回答が不十分だった場合に、都として、何かしらの行動というか、考えられていることは、あるのでしょうか。
【猪瀬副知事】
とりあえず、キャッチボールですから、球を投げて、どういう球が返ってくるか、その球によってまた、新しい球を投げ返すということになると思いますけど。
【記者】
こうした値上げをする前に、自分のところで、コスト削減をする努力をした方がいいのではないかというご指摘だったと思うのですが、それに対しての東電の反応というのは、どうだったのですか。
【猪瀬副知事】
今日、渡しただけですからね。これについては、あの東電から、いくつか、いろんな資料を出してもらったり、出してもらわなかったりしているので。きちんと出せと言っても、全部出し切れていないんです。それで、先ほどの、これは全部、我われの方で調べて、写真を撮り、そして一覧表にした。しかし、それについては、東電側は、協力はしていないです。
しかもあの有価証券報告書のどこの中に何が記載されているかということについて、例えば杉並のグランド持っていると、あれはどこの中に入っているのかとか、あるいは、こういう子会社は、ファミリー企業について。
だからじつはファミリー企業について全部、彼ら、資本金がわからないものもある、こっちに出した資料では。ファミリー企業について、本社が、本社の家賃はいくらということは、彼らは公開していない。今回の資料は推定で、詰めているわけですけれどね。まあ、だから、できるだけ協力しろと、協力するのは当たり前なんだが、きちんとできていないというわけですね。
【記者】
これまでもいろいろ、やりとりをしてるんですね。
【猪瀬副知事】
やりとりしてきているのです。だから、こういうものを作って、そして、こういう物を出すに至ったわけです。こういう物に出すに至らないような説明があれば、ここでやらないわけです。(以下、略)
(了)
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頑張って下さい 電力は水と同様社会生活に不可欠です 産業界も電力価格が高いと国際競争力が落ちます 東京電力が社会的責任感を持って価格決定してるとは思えません 本来国がなすべきですが 大阪府 東京都に期待しています
投稿: 川本修滋 | 2012年1月27日 (金) 18時22分