なかでも筒井副農相が期待したのは、富裕層の間で贈答品として人気の高い日本産のコメで、「当面、年間20万トン」と期待、中国側の感触も良かったという。
「覚書」に基づき、2011年1月には鹿野農相の招きで劉会長らが来日、JAの市場や倉庫、農業者大学校などを見学、都内のホテルでは「中国輸出促進会議」が開かれ、この模様をマスコミは大きく報じた。
ところが「3・11」は、そうした動きを帳消しにした。事故を受けて中国政府は日本の農産物に厳しい輸入規制を敷き、輸出に急ブレーキがかかった。
正副農相が、政治主導で進めた「中国への農業輸出」は、出ばなをくじかれた格好となったが、筒井副農相は動きを止めなかった。それが現在の疑惑につながっている。
農水官僚が作成したと思われる「怪文書」は、「見込みのない事業」のために、筒井副農相は、「中国輸出」に最初から熱心だった樋口俊一民主党代議士秘書の田中公男氏に受け皿法人の立ち上げを指示した。
こうして昨年7月、一般社団法人「農林水産物等中国輸出促進協議会(促進協議会)」が設立され、田中氏が代表理事に就任、公設秘書を辞め、促進協議会に専念している。
中国への輸出のメドは立っていないが、経費はかかる。なにしろ展示場は、今年2月のオープンに向けて内装工事が行われており、この費用が2億円で、昨年からすでに年間2億円の賃貸料が発生している。
つまり昨年の段階で4億円が必要なのに、期待した法人は集まらない。1000社を目標に入会金(15万~75万円)と会費(年10万~50万円)に期待をかけていたのだが、輸入制限中なので入会する企業はなく、やむなく同会は基金をつのり、賛同する法人などから1億8000万円を集め、そのうち1億4000万円を中国に送金した。
「攻めの農業」が一転、「サギ話」とされたことに筒井副農相は憤りを隠さない。
「原発事故は未曾有の災害によるもの。事業計画が狂うのは当然で、それは中国側も理解してくれている。支払については猶予してもらっているし、疑惑があるというので、田中代表に通帳を見せてもらったが、報告通りにすべて記載されていて、何の問題もない。悪意ある情報が流され、本当に迷惑だ」
その「悪意ある情報」が、農水官僚から流されているのは明白だという。3億円と1億8000万円の間に差があるのは、基金にカネを出す「予定法人」を、先走りして記入していたためで、他と合わせ、A4版4枚に及ぶ詳細な内容は、農水官僚の"誰か"以外に考えられない。
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