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〈放射能 本当のことを知りたい〉 三重大生物資源学部准教授 勝川俊雄氏 規制値内でも蓄積注意

(2012年1月21日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

食の安全 情報公開拡充を

画像三重大生物資源学部准教授 勝川俊雄氏

 −食品による内部被ばくが心配です。公表されたデータや、勝川さんが調査した結果から、どんなことに気をつければいいといえますか。
 「今起きていることは、チェルノブイリの後のヨーロッパと似ています。食物ではキノコ、ナッツ、ベリー類、淡水魚など、警戒すべきものはだいたい分かっている。淡水魚は普段イオンが少ない環境にすんでいるので、海水魚に比べてイオンを排出する仕組みが弱く、(水中でイオン化している)セシウムもたまりやすい。店で売っている魚は大丈夫でも、(福島周辺で)釣った魚を食べてしまうことで思わぬ内部被ばくをするおそれがあります」

 「ただ1キログラム500ベクレルの川魚やギンナンを少量食べても被ばく量はしれています。セシウムは6万ベクレルの摂取で1ミリシーベルトの被ばくに相当します。年間の内部被ばくを0.1ミリシーベルトにしたいなら6000ベクレルが目安になる。ベクレルの総量を知ることが大事です。ほとんど食べない食品はあまり気を使わなくていい。コメのように年間60キログラムも食べるものは、規制値に収まる1キログラム100ベクレルであっても、年間6000ベクレルの取り込みになります」

 −食品の放射能規制値が下がります。問題点は?
 「食品の検査体制は見直しが必要です。放射線の量が小さくなるほど、検査のハードルは上がる。正確な測定には外部の放射線を遮断できるような専用の機器が要ります。検査には十分から20分かかり、測定する試料をミンチにしないといけない。機器も人手も限られているのだから、従来のように牛肉ばかり調べるのではなく、注意しなくてはならない食品を重点的に検査すべきです。国は、自治体任せにするのでなく、専門家を集めて効率的な検査体制を構築してほしい」

 「汚染された地域は限定的です。食材や産地を選べば、内部被ばくは低い水準に抑えられそうです。どこまでリスクを避けるかは個人の判断であり、価値観の問題です。どう判断するにせよ、信頼できる情報が必要です。国や自治体は国民の食生活を守るという観点から、情報公開を拡充してほしい。生協や消費者団体が独自検査を始めています。公的機関とは独立の情報を市民の側から発信していくことも重要です」

 かつかわ・としお 1972年東京生まれ。専門は水産資源学。東大農学部卒。同大海洋研究所助教を経て2008年から現職。

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