【ブリュッセル=瀬能繁】欧州連合(EU)の加盟27カ国は24日の財務相理事会で、EU加盟国共通の財政ルールである安定・成長協定(財政協定)に違反したハンガリーについて「きちんとした財政再建策を怠った」との結論文書を採択した。執行機関である欧州委員会が制裁を勧告すれば、EU加盟国で初めて協定違反の制裁を受ける異例の事態に発展する。
安定・成長協定は財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を3%に収めることを加盟国に求めている。欧州委はハンガリー政府について「持続可能な方法で過剰財政赤字を削減するための効果的な対応をとらなかった」と勧告しており、財務相理事会としてこれを承認、制裁発動に向けて道を開いた格好だ。
次の段階として欧州委員会は2カ月以内にハンガリー政府に早期の対応を求める勧告を出す。仮に同期間内にハンガリーが財政再建策を抜本的に見直すなどの対応をとらなかった場合、欧州委は勧告の中に制裁発動を盛り込む方針だ。ユーロ圏でないハンガリーの場合は預託金徴収などの金融制裁は受けないが、2013年にEU基金の支給凍結などの制裁が発動される公算が大きい。
加盟国の財政規律強化のための安定・成長協定は昨年12月に改定され、協定違反国にほぼ自動的に制裁を発動しやすくなった。これまで制裁が発動された例はなく、財務相理事会の反対が多数にならない限り、欧州委の勧告が承認される「逆多数決」が導入された。
記者会見したEU議長国デンマークのベステエア副首相・経済相は「ハンガリーはやらなければならないことをやらなかった。(制裁は)ルールが機能していることを示す歴史的な節目になる」と強調した。
ハンガリーは11~12年の財政赤字はGDP比で3%以内に収まる見通しだが、民間年金基金を国家財政に吸収するなどの強引なやり方で「構造的な財政収支はかえって悪化した」と欧州委は判断した。
ハンガリーはEUの「問題児」となりつつある。国会の圧倒多数を背景に、中央銀行や情報保護当局の独立性を脅かしたり、裁判官・検察官の定年を引き下げたりする内容の新憲法・基本法を施行した。欧州委は「EU条約違反の恐れがある」として、EU司法裁判所への提訴を視野に是正手続きを開始した。
ハンガリーのオルバン首相は24日にブリュッセルでバローゾ欧州委員長などと会談し、今後の対応を協議。シュルツ欧州議会議長はオルバン氏を「欧州の指導者たちは愚かではないことを考慮すべきだ」と批判した。
ハンガリーは通貨フォリントの下落、資金流出を受けて昨年11月、EUと国際通貨基金(IMF)に予防的な金融支援の実施を要請した。だが、中銀の独立性などをめぐる見解で対立、現時点でEUとIMFの支援が宙に浮いたままだ。
また、ベステエア氏は「すべての国が財政再建に取り組むのと同時に経済成長を確保すべきだ」と述べ、30日のEU首脳会議で成長戦略が主要議題の一つになるとの見方を明らかにした。具体的な分野としてEU域内の単一市場、貿易、構造改革の促進などを挙げた。
EU、ハンガリー、IMF
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