2012-01-26 紛争地域のその先 (電子書籍市場) 
電子書籍については、前向き、後ろ向き含め、すったもんだしてて楽しい限りです。ところで、本ができるところから最後までは(必ずしも一直線ではありませんが)こんな感じでしょうか?
持ち運ばれることが多い本は教科書ですね。本の活用では「資料としての本」を大量保有している研究者やジャーナリストの方の使い方を想定してます。
このうち最初の2プロセスは既にデジタル化しています。もちろん今でも「原稿用紙に万年筆」で書いてる作家さんもいるんでしょうが、大半の著者はタイピングによってデジタル文章を作っているはず。
さらに編集プロセスも、原稿のやりとりや文章修正、装幀やデザインの制作、印刷行程など、電子メールや電子ファイル、デジタル加工が当然のように主流になっていると思います。
「当たり前」すぎて話題になることもない「最初の2プロセスのデジタル化」ですが、それが進んだ理由は「誰も損をしないから」です。下図にあるように、関係者はみんなハッピーで、それ以外の人には関係がありません。読者も書店も、原稿が万年筆で書かれようがパソコンで打たれようが、どうでもいいはず。
ところがこの先は大変です。販売プロセスに関しては「大紛争」とでもいうべき状態・・・
時代の方向性としてデジタル化は止められないけれど、「それじゃあ食べられなくなる!」書籍供給側を無理矢理に動かすことは誰にもできない上、そもそもまだ電子書籍を読んでる人が少なすぎ。加えてアップル様やアマゾン様など青い目の御仁からのご無体な要求もビシバシ飛んできて、この地帯はぐちゃぐちゃ状態。
でも実は、この紛争地帯の先には広大な「誰もソンしない」エリアが存在してる。
読書好きの人で本の保管に悩みのない人は存在しないし、重い教科書を毎日毎日、学校に運ぶことには何の付加価値もない。
研究者やジャーナリストの「本の活用」だって、天井までぎっしり積まれた本の中から必要な情報を探すのは至難の業。デジタル化され、検索やデジタル切り抜き保存ができたらどんだけラクなことか!
ところが紛争地帯があるために、この「誰もソンしない!」エリアのデジタル化も進まない。
だから当然の要請として、「自炊」という行為(自分の保有物である紙の本を裁断、スキャンして電子化する行為)や、それを代行する業者が現れた。「メリットのない供給側がデジタル化しないなら、メリットのある読者側が自分でやる」というのは、ごくごく自然な流れ↓
ちなみに今はこれにも横やりが入りつつあるのは皆さん、ご存じのとおり。
★★★
だけど、「紛争地帯」を避けた「その後」の電子書籍市場が(or だけでも)超有望なのはみんなわかってる。
ちきりんは中学生の頃、星新一さんが大好きで彼の本を読みあさった。それらの本も今は一冊も手元にないけど、すべてのショートショートを含む「星新一デジタル全集」なら、紙の本と同じ値段でも買う可能性は十分ある。(今すこしずつ電子化されつつあります。)
しかもそれって全員がハッピー!
・ちきりんにとって「星新一デジタル全集」を買うのは、新作の本を買う消費行動の代わりではないので、書籍業界に「真水の追加収入」が入ってくる。
・ちきりんは「星新一(紙の本の)全集」を買う気には全くなれないので、星新一本の著作権や出版権を持ってる人にとって、これらは完全に「新たな収入源」になる。
他にも「昔読んだ漫画の全集」や「好きな作家のデジタル全集」を“大人買い”したい中高年はたくさんいるでしょ?「ベストビジネス書100選デジタル大全」みたいなのだって売れそうじゃん。
保管場所をとらず、検索が可能でいつでも「あの話!」を探せる。これは、メリットが大きいというレベルを越えて“わくわく”さえする、久しぶりの「超有望新市場」だよね。
加えて読書のプロセスにも「ソーシャルリーディング」で新たな市場ができそうだし、教科書も持ち運びが不要になるだけでなく、いろんな工夫で付加価値がつけられそう。遠隔塾や学習指導(e-learning)とのコラボもありえる。
家中が本で溢れかえっている人だって、大量の蔵書のうち、一部のどうしても紙で保存したい本を除いた大半をデジタル化して本棚がすっきりすれば、更に多くの本を買ったりしそう。(これには自炊協力業者が不可欠)
・・・だけど「紛争地帯」が・・・
というわけで、お勧めとしてはとりあえず紛争地域を回避して、その後の部分だけでも先にデジタル化を進めたらしたらいーんじゃなかな。こういう感じで↓
(注:もちろん書店も、ネット販売書店はニコニコマーク)
だってそうしないと、こう(↓)なっちゃうよ!? これはさすがに最悪でしょう。
新技術が利用可能になっているのに、新しい仕組みが作れなくてそのメリットが享受できないなんて超もったいない。揉めてるのは一カ所だけなんだから、そこはとりあえず置いといて、どんどん先に進もう!
そんじゃーね!