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[09/07/03-09:05]
【コラム】ガンディーを支えたインドの万年筆[奥埜梨恵 ]
インドにいると何度もサインをする機会がある。私は手持ちの青色ボールペン「cello, R&D in Japan」でサインをするのだが、たまに年配の方が万年筆でササっとサインを書くのをみかけると、「あ。いいな」と、思う。
インド独立以前に、かの有名なガンディーが、「スワデーシー」をスローガンに掲げていたことがある。イギリスをはじめとする外国製品を排斥し、インド国内の資源を使ってインドの人々の手による自国の発展を遂げようとする運動だ。今でもガンディーの糸車をまわす姿は良く知られているが、この姿は手織りの国産綿織物「カーディー」を推奨している象徴でもある。
ガンディーは「ゴースト・ライター」説がささやかれるほど、膨大な書簡や書籍を残している。そのときに握るペンですら国産品にこだわっていたという。1921年に、ガンディーが石版印刷板の作業に携わっていたM.V.ラトゥナーム氏に、「人のためになるものを作るように」と諭したのが始まりだ。ラトゥナーム氏は約10年の歳月をかけて純国産のペンを製作し、エボナイト製の万年筆をガンディーに贈ったという話がある。その書き心地にいたく感動したガンディーは、その万年筆を使って御礼状を書いている。その後も、ネルーやインディラ・ガンディーなどの政治家が、このラトゥナームの万年筆を愛用している。
実はこのラトゥナームの万年筆、現在でも手に入れることができる。今はラトゥナーム・ボールペン・ワークス社として営業を続け、アーンドラ・プラデーシュ州のラージュムンドゥリーという町でボールペンと万年筆を作り続けている。値段は約2,000ルピーからと、インドの万年筆にしては少々割高である。
ガンディーのこの運動により、インドの人々にまで「インド独立」を大きく意識させ、全国レベルでのイギリス排斥運動に発展したといっても過言ではない。ラトゥナームのペンも、その歴史に名を刻んだ「スワデーシー・ペン」なのである。
世界を相手に「スワデーシー」で戦いを挑んだインド。その熱い魂は、経済のグローバル化が進む今のインドでも、確実に受け継がれている。
(残念ながら、多くのインド人が「スワデーシー・ペン」の存在を知らず、「日本のボールペンが一番」と思っていることが多いのだが・・・)
奥埜梨恵
南アジア地域研究出身。現在、Jawaharlal Nehru UniversityのCentre for Historical Studies(史学科)にて、インド・パキスタン独立史を中心に研究中。
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