UPDATE2: 円高長期化なら貿易赤字定着も、消費税10%超言及前に何やるべきか議論を=経団連会長
*年金改革に伴う消費増税に関するコメントなどを追加します。
[東京 25日 ロイター] 日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学(4005.T: 株価, ニュース, レポート)会長)は25日午後の定例会見で、2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字になったことについて「一時的なものと期待している」と述べた。昨年3月11日に発生した東日本大震災後のサプライチェーン(供給網)寸断による製造業の出荷低迷や円高が大きく影響したとの認識を示した。
また、「円高が長期的に続けば大変な問題で、貿易赤字が定着することもありうると危惧(きぐ)している」と語った。合わせて、「今後も日本は貿易立国であるべきと思う。技術力、人材力、それに裏打ちされた国際競争力を向上させる必要がある」との見解を示した。
31年ぶりの貿易赤字を材料に外国為替市場でドルやユーロに対して円売りの流れになったことについては「微々たる動き。これが長続きするかどうか」と指摘し、欧州債務危機や雇用統計など米国景気が改善されなければ「円高はなかなか修正されないのではないか」との考えを示した。
さらには「社会保障と税の一体改革があまり進まずに貿易赤字が継続するということになると、日本売りが始まるだろう。国際的に日本の信用度が落ちると、円安になり、金利も上がる。そうなると手がつけられなくなる」と述べ、「今のうちに一体改革はどんどんやっていくべきで、市場はそういったことを見つめているのではないか」と語った。
一方、年金制度改革の財源として消費税10%でも足りず、さらなる増税が必要とする岡田克也副総理の考えについて「それを言う前に、どういうことをやるべきかを先に示していかなければならない」と指摘、「将来、何年になったらいくら足りないということを議論しても、いろんな前提があると思う。それよりもむしろ、今の時点で何をやるべきかをもっと議論してもらいたい」と語った。
<所得再配分よりも経営環境の克服が重要>
同日午前には連合の古賀伸明会長とのトップ会談が行われ、2012年の春闘交渉が本格的に始まったが、経済回復には所得の適正な再配分が必要とする古賀会長の考えに対して、米倉会長は「所得の再配分で需要が喚起されるということは経済学的には考えられない」とし、「再配分よりも円高など非常に厳しい経営環境をどう克服して経済成長につなげていくかが非常に重要」とあらためてけん制した。
(ロイターニュース 白木真紀)
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