名古屋市北区の元国家公務員宿舎跡地への移転を計画していた駐名古屋中国総領事館(名古屋市東区東桜)が、移転方針を断念した模様だ。同跡地は国が2011年度内の売却を予定しており、中国領事館が買取りを希望していた。
しかし、10年9月に尖閣諸島沖で発生した中国漁船の海保巡視艇への衝突事件で、抗議団体や周辺住民などによる移転計画への反対運動に火がついた。中国側は強行しても領事業務に支障が出かねないと判断したようだ。
在日中国大使館関係者が語る。
「現在の領事館内には宿舎がなく、総領事以外の館員はすべて近くの民間マンションに間借りしている状態。この跡地を確保できれば繁忙になっている領事業務用のスペースも含めて20倍以上のスペースを確保できる見通しでした」
国が2011年度の売却を予定していたのは、名古屋城近くの元国家公務員宿舎「名城住宅」(名古屋市北区名城)を取り壊した跡の敷地3万平方㍍余り。このうち約8千平方メートルの取得を中国側が希望していた。
東海財務局などによると、国有地の売却先は通常、学校や病院など公共性のある団体等に限られる。希望者の用途や資金力などを審査したうえで、財務局内に置かれる国有財産地方審議会の答申を経て決定する。
しかし、中国総領事館用地については、尖閣諸島沖の衝突事件で売却に反対する動きが活発になったこともあり、売却計画自体が日中間の懸案として官邸や霞ヶ関を巻き込む案件になっていた。
日中関係筋の間では、昨年末に訪中した野田佳彦首相と中国側との首脳会談で両国の関係改善に期待する声があったが、中国側の事情で日程がいったん延期されるなどの事情もあり、「会談の成果はいま一つ」(中国筋)と受け止められている。
同市東区にある現在の総領事館周辺は、今も多くの制服警官による厳重なセキュリティーチェックが続いており、領事館関係者は「少なくても今後数年は移転計画を封印せざるを得ない状況」と見ているようだ。
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