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長崎・西海の女性2人殺害:ストーカー殺人 遺族、法の不備訴え 3県警の連携不足指摘

 ◇「脅迫続いていたのに野放しにされた」

 長崎県西海市の山下美都子さん(56)と久江さん(77)が殺害された事件で、美都子さんの夫、山下誠さん(58)が27日、弁護士を通じて現在の心境などを書面で明らかにした。長崎、千葉、三重県警に被害を相談していたにもかかわらず、妻と母を殺された山下さんは「法律を変えてほしい。家族だけではストーカー加害者から被害者を守れない」などと記し、ストーカーやDV(ドメスティックバイオレンス)被害に対する法制度の不備や警察の連携不足などを訴えた。

 書面によると、山下さんは三女(23)が筒井郷太容疑者(27)から暴行され監禁状態にあることを知り、長崎県警を通じて三女が住む千葉県の習志野警察署に相談。三女の上司らが部屋に突入して三女を救出し、同行した署員が筒井容疑者を傷害容疑で任意同行した。同署は「三女には近づかない」との誓約書を取り、逮捕しなかった。

 しかし筒井容疑者は三女の知人らに「居場所を教えなければ殺す」とメールを送るなどしたため、山下さんは今月6日、逮捕を求めて同署を訪ねたが「1週間待って」と言われた。その後も筒井容疑者は三女の周囲をうろついたが、傷害の被害届が受理されたのは8日後。この間、脅迫メールを送られた人たちの保護も相談したが、習志野署の返答は「メールを受けた人が住んでいる管轄の警察に相談してください」だったという。

 また、山下さんは筒井容疑者の行方が分からなくなったため、筒井容疑者の実家がある三重県の桑名署に実家の巡回を要請したが「何の連絡もなかった」としている。

 こうした対応について山下さんは「威迫行為が続いていたのに野放しにされていた」と訴える。

 これについて、千葉県警捜査1課の鈴木誠課長代理は「筒井容疑者に『三女にはもう近づかない』との誓約書を書かせて帰したこと、1週間待ってと言ったことは事実だが、なぜそうしたのかは検証中。脅迫メールの件は事実関係も含め調べている」と述べた。また、三重県警桑名署の森本伸一副署長は「確かに電話連絡はあったが、『相談カード』には『巡回してほしい』との内容がなく、巡回の指示も出ていなかった」と述べた。【梅田啓祐、下原知広】

 ◇鑑定留置を決定

 長崎県西海市の2女性殺害事件で殺人容疑などで逮捕された筒井容疑者について、長崎地裁は鑑定留置を決めた。期間は来年1月4日から約4カ月間。刑事責任能力の有無を調べるとみられる。

毎日新聞 2011年12月30日 東京朝刊

 

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