"37歳婚カツ詐欺師"木嶋佳苗被告、「男たらし」の超絶テク(下)
首都圏連続不審死
◆気遣うふりして主導権手放さず◆
太め女性恋愛応援カウンセラーの羽林由鶴(はねばやしゆず)さん(46)は言う。
「ファーストネームで呼ぶと親近感を覚えさせます。『ドキドキ』のような擬音語をまぜている点も、2人の距離が縮まった感じを与えます」
もちろん、性的なことをにおわせるのも忘れない。
〈嘉之さんは10年ほど彼女がいなかったといっていましたが、女性に性欲は感じなかったのですか? 突然、彼女ができても平気ですか?〉
色っぽい呼びかけに、当然ながら大出さんのテンションも上がり、〈試してみる?〉などと、くだけた調子でメールを返している。
だが、大出さんに甘いメールを送った同じ日、木嶋被告は同じ婚活サイトで知り合った80代の男性Cさんともやりとりを始めているのだ。
高齢のCさんには、
〈Cさんのご年齢で一人暮らしをされているなんてご立派です。お体は悪いところはないですか。私は介護の仕事をしているので、お世話したい衝動に〉
などと介護ができることを強調。前出の羽林さんによると、かなり高等なテクニックも駆使している。
「Cさんに対しては、『出会いは運命で必然』という言葉を送っています。これは、なんで若い女性が自分のような高齢者に?という違和感を『運命』というロマンチックな言葉ですり替えているのです。メールを見ると、被告は相手に合わせているようで、一貫して主導権を握っていることがよく分かります」(羽林さん)
木嶋被告は、Cさんとも7月29日に東京・池袋のフランス料理店で食事をともにするなど関係を深めていく。もちろん、食事後はすぐに礼状メールを認め、大出さんと同じく自宅の住所を知らせている。
〈ごちそうさまでした。美味しいフランス料理をありがとうございました。暑い中、わざわざお越しいただいてありがとうございます。想像以上に素敵で元気な方で驚きました。私の住所を送りますね〉
一方、肉体関係については、男性としての機能に関係なく裸で抱き合えればいいという趣旨で、
〈肌と肌の触れ合いで安らぎや愛情を感じたい〉
と伝え、高齢という点への配慮をにじませる。
検察側は、木嶋被告が大出さん、Cさんと頻繁にメールを交わす一方で、恋人とみられる男性とも逢瀬を重ねていたと指摘する。
交際していた男性のなかで唯一、木嶋被告が金銭を要求しなかったAさんだ。
Aさんとは、7月18~21日に福島県の裏磐梯を旅行しているが、木嶋被告はその旅行中も、
〈私も早く嘉之さんと幸せになりたいです。嘉之さんはハンサムなので、子供ができてもきっと可愛いだろうなとウキウキしています〉
とフォローを欠かさない。そして帰京後はすぐに、
〈自宅で話して、生涯の伴侶として認めてくれるなら、その後ラブホテルに行ってもかまいません〉
〈もちろん避妊しなくてかまいません〉
と迫り、2人は23日に肉体関係を結んだという。
翌24日には、料理学校への学費支払期日が迫っているという木嶋被告の要求に応え、大出さんはJR神田駅構内で470万円の現金を渡したとされる。
だが、お金は料理学校には支払われなかった。被告は現金の受け取りそのものを否定しているが、検察の指摘によれば、被告は大出さんに感謝のメールを送る一方で、25日にAさんにもこんな趣旨のメールを送ったという。
〈昨日、パパが日本に戻り、お土産を取りに来いというので行ったら、お小遣いだった。ホテル帰りに現金くれたので、怖くて帰りはタクシーで帰った〉
メールには、帯封つきの100万円束四つの写真が添付されていた。そして、木嶋被告はこう続ける。
〈Aさんとホテルに行くことばかり考えてる〉
8月5日、大出さんは自身のブログに、
「今夜から2泊3日で相手と婚前旅行に行きます」
と書き込み、東京都板橋区内にあった木嶋被告のマンションに向かったが、翌朝、埼玉県富士見市内の駐車場に止めた車の中で、一酸化炭素中毒で死亡しているのが見つかった。
被告は殺害を否定し、大出さんは被告との別れ話を苦に自殺したのではないかと主張している。
100日に及ぶ裁判では、どこまで真実が明らかになるのか。本誌は精力的にウオッチしていく。 (本誌・大川恵実、大貫聡子、神田知子、山岡三恵)
週刊朝日2012年01月27日号配信
2009年に首都圏で起きた男性3人の連続不審死にかかわったとして、殺人や詐欺など10件の罪で起訴された木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判が1月10日からさいたま地裁で始まった。公判で検察が示したメールからは、男心をつかむ木嶋被告の超絶テクニックが明らかになってきた。
◆気遣うふりして主導権手放さず◆
太め女性恋愛応援カウンセラーの羽林由鶴(はねばやしゆず)さん(46)は言う。
「ファーストネームで呼ぶと親近感を覚えさせます。『ドキドキ』のような擬音語をまぜている点も、2人の距離が縮まった感じを与えます」
もちろん、性的なことをにおわせるのも忘れない。
〈嘉之さんは10年ほど彼女がいなかったといっていましたが、女性に性欲は感じなかったのですか? 突然、彼女ができても平気ですか?〉
色っぽい呼びかけに、当然ながら大出さんのテンションも上がり、〈試してみる?〉などと、くだけた調子でメールを返している。
だが、大出さんに甘いメールを送った同じ日、木嶋被告は同じ婚活サイトで知り合った80代の男性Cさんともやりとりを始めているのだ。
高齢のCさんには、
〈Cさんのご年齢で一人暮らしをされているなんてご立派です。お体は悪いところはないですか。私は介護の仕事をしているので、お世話したい衝動に〉
などと介護ができることを強調。前出の羽林さんによると、かなり高等なテクニックも駆使している。
「Cさんに対しては、『出会いは運命で必然』という言葉を送っています。これは、なんで若い女性が自分のような高齢者に?という違和感を『運命』というロマンチックな言葉ですり替えているのです。メールを見ると、被告は相手に合わせているようで、一貫して主導権を握っていることがよく分かります」(羽林さん)
木嶋被告は、Cさんとも7月29日に東京・池袋のフランス料理店で食事をともにするなど関係を深めていく。もちろん、食事後はすぐに礼状メールを認め、大出さんと同じく自宅の住所を知らせている。
〈ごちそうさまでした。美味しいフランス料理をありがとうございました。暑い中、わざわざお越しいただいてありがとうございます。想像以上に素敵で元気な方で驚きました。私の住所を送りますね〉
一方、肉体関係については、男性としての機能に関係なく裸で抱き合えればいいという趣旨で、
〈肌と肌の触れ合いで安らぎや愛情を感じたい〉
と伝え、高齢という点への配慮をにじませる。
検察側は、木嶋被告が大出さん、Cさんと頻繁にメールを交わす一方で、恋人とみられる男性とも逢瀬を重ねていたと指摘する。
交際していた男性のなかで唯一、木嶋被告が金銭を要求しなかったAさんだ。
Aさんとは、7月18~21日に福島県の裏磐梯を旅行しているが、木嶋被告はその旅行中も、
〈私も早く嘉之さんと幸せになりたいです。嘉之さんはハンサムなので、子供ができてもきっと可愛いだろうなとウキウキしています〉
とフォローを欠かさない。そして帰京後はすぐに、
〈自宅で話して、生涯の伴侶として認めてくれるなら、その後ラブホテルに行ってもかまいません〉
〈もちろん避妊しなくてかまいません〉
と迫り、2人は23日に肉体関係を結んだという。
翌24日には、料理学校への学費支払期日が迫っているという木嶋被告の要求に応え、大出さんはJR神田駅構内で470万円の現金を渡したとされる。
だが、お金は料理学校には支払われなかった。被告は現金の受け取りそのものを否定しているが、検察の指摘によれば、被告は大出さんに感謝のメールを送る一方で、25日にAさんにもこんな趣旨のメールを送ったという。
〈昨日、パパが日本に戻り、お土産を取りに来いというので行ったら、お小遣いだった。ホテル帰りに現金くれたので、怖くて帰りはタクシーで帰った〉
メールには、帯封つきの100万円束四つの写真が添付されていた。そして、木嶋被告はこう続ける。
〈Aさんとホテルに行くことばかり考えてる〉
8月5日、大出さんは自身のブログに、
「今夜から2泊3日で相手と婚前旅行に行きます」
と書き込み、東京都板橋区内にあった木嶋被告のマンションに向かったが、翌朝、埼玉県富士見市内の駐車場に止めた車の中で、一酸化炭素中毒で死亡しているのが見つかった。
被告は殺害を否定し、大出さんは被告との別れ話を苦に自殺したのではないかと主張している。
100日に及ぶ裁判では、どこまで真実が明らかになるのか。本誌は精力的にウオッチしていく。 (本誌・大川恵実、大貫聡子、神田知子、山岡三恵)