立ち読み週刊朝日

"37歳婚カツ詐欺師"木嶋佳苗被告、「男たらし」の超絶テク(中)

首都圏連続不審死

週刊朝日2012年01月27日号配信

2009年に首都圏で起きた男性3人の連続不審死にかかわったとして、殺人や詐欺など10件の罪で起訴された木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判が1月10日からさいたま地裁で始まった。公判で検察が示したメールからは、男心をつかむ木嶋被告の超絶テクニックが明らかになってきた。


◆返済のメド示し、学費貸与求める◆

 大出さんがやや気を許し、
〈学費や生活費も、付き合いを進めるうちに援助できるかも〉
 と返すと、すぐさま"本題"に踏み込む。木嶋被告が望んだ料理学校のコースに通うには、計約470万円の学費が必要だった。

 この点について、
〈車を売ろうと考えています。査定で学費と同額とでました。購入希望者が8月末に買うといってくれています〉
 としつつ、それだと学費の納入期限の1カ月先なので困っていると表明。お金のメドはあるのだが、少しの期間だけ援助してほしいとハードルを下げてみせ、
〈明日にも会えるなら会いたいです〉
 と提案している。

 この時点では、大出さんも被告の急ぎっぷりに戸惑ったようで、こんなメールを返している。

〈明後日なら。ずいぶん、急いでますね。明日から夜勤だし、気持ちの準備もあるし......〉

 ここで注目されるのは、木嶋被告の切り返し方だ。

〈こういうサイトは初めてで......。もしかして、会うまでに時間をかけるべきなのでしょうか。会ったことのない人とメールを交換する気にはなれなくて〉

 出会い系サイトで働いた経験のある女性によれば、これは120点満点の回答だと言う。

「素人とは思えないくらいにうまい。会うまでに時間をかけるべきかと尋ねて、先延ばしになりそうにみせることで、早く会ったほうがマシだと考えるように自然に誘導している。さらに、会ったことがない人とメールをするのは怖いと示唆し、自分のほうが不安を抱いている立場だと印象づけている」

 結果、大出さんは2日後にJR神田駅で会う。その夜、木嶋被告は「会った人にはその日のうちに礼状を出す」というマナーの基本を踏まえつつ、こんなメールを送っている。

〈今日はありがとうございました。私の住所をお伝えしておきますね。再来週、またお会いしましょう〉

〈妹に紹介する日は24日か25日でどうでしょう。今日お会いして、想像以上に素敵な方で......〉

 前出の渡部さんによれば、これらの文面もポイントが高いという。

「男性にとって女性の住所と年齢はもっとも聞きづらい質問です。それを女性から教えてもらえると楽ですし、自分を信頼してくれているんだ、とうれしくなってしまう。しかも家族に紹介するとなれば、これは自分を認めてくれている証しだと確信します。舞い上がるのは当然ですよ」

 翌日からは、より親愛の情を深めつつ、資金援助については家族に言うなとくぎを刺すのも忘れない。

〈今日、学校で進級したいと伝えました。嘉之さんの厚意にどう応えたらお返しできるか考えています。私といることで、幸せや愛情を感じてほしいと思っています。私の家族は、学校のことで悩んでいると知っているので、嘉之さんが助けてくれることは家族にも伝えています。ただ嘉之さんの家族には援助したことは言わないでほしいです〉

〈お会いしてからずっと、嘉之さんのことを考えてしまいます。こういうドキドキがあるなんて〉

【(下)に続く】