富山県で03年に起きた性犯罪の被害者の女性が加害者の男(33)=強姦(ごうかん)罪などで実刑判決=やその弁護人の男性弁護士(44)を相手取り、執拗(しつよう)に示談を迫られ精神的苦痛を受けたとして880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があり、富山地裁が弁護士の行為を「違法」と認定していたことが分かった。判決は12月14日。男と弁護士に計583万円の支払いを命じた。弁護士は「守秘義務があるので話せない」とコメントしている。
男は当時20代の女性に包丁を突きつけて性的暴行をしたとして時効半年前の10年4月に強姦容疑で逮捕され、懲役3年6月の実刑判決を同年9月に言い渡された。
今回の判決などによると、女性は示談を強く拒否していたが、弁護士は加害者の家族に女性の住所を伝え、家族が女性宅を10年7月に訪問。さらに、刑事裁判開始後の同年8月、女性の家族に「女性は検察官に都合よく利用されているが、裁判が終わると不要品を捨てるように相手にされなくなる」などと、示談を迫る手紙を送った。
女性は「男の家族がまた訪ねてきたらどうしよう」などとパニックになり精神的苦痛を受けたという。示談成立によって刑の減軽を図る弁護活動の一環とみられる。
判決では「女性の示談に応じないとの意志は極めて明確で、示談交渉が不可能であることは客観的に明らか」と指摘。弁護士の行為の一部を「女性の感情をさらに傷付け、苦しめるだけであり、犯罪被害者等基本法の趣旨を損なう。正当な弁護活動を逸脱しており違法」と認定し、弁護士に33万円、加害者の男には550万円の賠償をそれぞれ命じた。
この弁護士は、被後見人の金を着服したなどとして、富山県弁護士会から過去4回、懲戒処分を受けている。【大森治幸】
毎日新聞 2012年1月21日 大阪朝刊