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富山

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賠償訴訟:犯罪被害者に、弁護士示談強要 「女性の苦痛消えぬ」判決受け専門家ら、第2・第3の被害心配性 /富山

 性犯罪被害者に「検察官に都合よく利用されている」との手紙を送るなど執ように示談を迫った弁護士の行為を違法と断じた先月の富山地裁判決が、毎日新聞の取材で明らかになった。県内の弁護士からは「過去に聞いたことがない」と驚きの声も聞かれ、犯罪被害者を支援する専門家は「被害者にとって加害者の情報が入るだけでもつらいときがある。精神的な負担は第2、第3の被害を生むこともある」と指摘している。【大森治幸】

 この裁判は03年に起きた性犯罪事件の被害者の女性が加害者の男(33)やその弁護人の男性弁護士(44)を相手取り、執ように示談を迫られ精神的な苦痛を受けたとして880万円の損害賠償を求めて富山地裁に提訴。判決は先月14日で、男と弁護士に計583万円の支払いを命じた。

 「とやま被害者支援センター」(富山市牛島町)の高野佳子・犯罪被害者直接支援員は「性犯罪の被害者は事件のことを一切断ち切りたいと思っている。加害者の関係者が謝罪に来ると言っても、一切顔も見たくない状態だ」と語る。また、県警犯罪被害者支援室の女性心理カウンセラーは「性犯罪の被害者は、世の中に対して不信感を抱いてしまい、それが何カ月たっても消えない」と話す。性犯罪の場合は被告との言い分が食い違う場合も少なくないといい、法廷で証言せざるを得ない場合があるが「同じ場に加害者がいる、同じ空気を吸っていると思うだけでもつらい」と指摘する。

 一方で、被害者に対して示談や弁償を申し入れるのは、被告の刑事罰を少しでも軽くするための「弁護活動」だ。県内のある弁護士は「弁護人になったら、被害者への被害弁償は必ずするよう被告に勧めている。刑を軽くしてもらうためでもあるし、被告本人の反省をうながすためでもある」と話す。しかし、被害者が断ればそれ以上は深入りしないという。

 高岡法科大学の関根徹准教授(刑事法)は「弁護士として、何回か示談をお願いして相手方に折れてもらうというやり方はある」としたうえで、「うそをついたり不利益が生じると言うなどその方法が詐欺的であったり、威圧的だと取られかねないものであれば問題になる。被害者を被害者として尊重しつつ、丁寧にお願いすることが大切だ」と指摘している。

毎日新聞 2012年1月22日 地方版

 
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