話題

文字サイズ変更

津波犠牲:福島の5歳、身元判明 ママと安らかに

男児の遺骨が置かれていた祭壇。自宅が流されるなどして埋葬できない遺骨とともに、今も身元不明の女性1人の遺骨が供養されている=宮城県山元町の明光院で2012年1月24日、竹田直人撮影(一部画像を処理しています)
男児の遺骨が置かれていた祭壇。自宅が流されるなどして埋葬できない遺骨とともに、今も身元不明の女性1人の遺骨が供養されている=宮城県山元町の明光院で2012年1月24日、竹田直人撮影(一部画像を処理しています)

 東日本大震災の大津波の犠牲となり、宮城県山元町の寺「明光(みょうこう)院」に遺骨が安置されていた男児の身元が判明し、24日、祖父母に引き取られた。宮城、福島両県で唯一身元が判明していなかった小学生未満とみられる遺骨だった。震災から320日目。遺骨はようやく自分の名前を取り戻し、同じく津波の犠牲になった母の隣に埋葬されることになり、寺の住職や住民らは「良かったね」と声をかけた。【竹田直人、高橋宗男】

 宮城県警によると、遺体は昨年4月下旬に福島県相馬市沖の海上で発見され、宮城県内に運ばれた。遺体番号「906」。そう呼ばれてきたが、DNA鑑定の結果、24日に福島県双葉郡の当時5歳の男児と判明した。

 遺骨が明光院に安置されたのは昨年6月から。住職や付近の住民らは「男の子が一人でいるのは可哀そう」と玩具や絵本などを供え、身元判明を待ちわびた。宮城県警には、行方不明のままの子供を捜す親や親族から「うちの子では」「孫ではないでしょうか」などと12件のDNA鑑定依頼が寄せられた。男児の身元が判明したのは12件目の最後の鑑定。母親の遺体の鑑定資料が決め手になった。

 明光院には24日、福島県在住の男児の祖母が遺骨を引き取りに来た。副住職の宮部龍真(りゅうしん)さん(29)は「帰るべきところに帰れて本当に良かった。これからは本当の名前でご供養できる」と話す。男児の生前の写真を祖母からもらったといい、「まるで女の子のような可愛らしい子。無情を感じる」と声を詰まらせた。祖父母は「帰りを待ちわびていた孫の身元が確認され、私どもの許(もと)に戻って参りました。この場をお借りして御礼を申し上げます」とのコメントを出した。祖父母の意向で男児の名前は公表されていない。

 同院ではもう一人、身元不明の女性の遺骨を預かっている。宮部さんは「身元が分からない犠牲者はまだたくさんいるが、男の子のように家族のもとに帰ってほしい」と願う。

 宮城県警によると、県内の行方不明者約1800人には、遺体が見つかったのに身元が分からない423人(24日現在)が含まれる。県警は全国の関係機関と連携し、DNA鑑定などを進めており、「一日も早く、最後の1体まで特定したい」(県警捜査1課)としている。

毎日新聞 2012年1月24日 21時01分(最終更新 1月24日 21時18分)

 
Follow Me!

おすすめ情報

注目ブランド

特集企画

東海大学:山下副学長「柔道家として教育を語る」

学生時代の思い出から今の日本の課題まで

縦横に語ってもらった。

毎日jp共同企画