「脱原発の市長を誕生させよう」。そんな熱気の中、新人の中村和雄(57)=共産推薦=が力を込めた。「私は共産党にかつぎ出されたのではない。こういう運動を広げてください」
今月8日、京都市東山区で開かれた集会。主催したのは主婦や会社員、カフェ経営者らで昨年10月に発足した「中村和雄さんを市長にしよう! 勝手連」。237人(18日現在)が賛同人に名を連ねる。多くが無党派の立場で集会やビラ配布を続ける。
集会の参加者の一人は中村に「報道などで『共産対非共産』の構図が強調されているが、それだけでは京都市を変えられない」と訴えかけた。
「勝手連」が中村の政策で特に期待するのが脱原発。司会者が「京都市中心部は若狭の原発群から60キロ。私たち自身の課題だ」と強調すると、中村も「脱原発を明確にする市政を実現する」と応じた。
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「日ごろからご支援をたまわっていますが、今年はことのほかお世話になります」。今月5日、下京区で開かれた京都商工会議所など府内の経済4団体の年賀交歓会で、現職の門川大作(61)=民主、自民、公明、みんな、社民府連推薦=はこう切り出し、約1000人の出席者を沸かせた。門川はさらに「経済界の願う政策と市の政策を完全に融合させる」とアピールした。
経済界は門川支援で結束している。門川の選挙母体「未来の京都をつくる会」会長に、前回選に続いて同商議所の立石義雄会頭が就任。経済団体の代表らが役員に名を連ねる。
「私たちは門川さんの実績と政策で支援を決めた」。同商議所幹部は非共産の枠組みに合わせた形式的なものではないと強調する。
経済4団体は昨年11月、門川の前回選マニフェストと1期目の実績を比較した。京都の伝統と先端技術を生かした産業育成を目指す「知恵産業融合センター」(下京区)を実現させたことなどを評価。さらに今回のマニフェストには「知恵産業創造ファンド(仮称)」創設など4団体の要望した施策が盛り込まれている。
着々と「オール京都」態勢を築きつつある門川陣営だが、同商議所幹部は不安も口にした。「大阪ダブル選で示されたように、既存の政党や組織への不満、閉塞感の打破を望む声は京都にもあるかもしれない。それがどう反映するのか」(敬称略)【太田裕之】
毎日新聞 2012年1月20日 地方版