【これでも法治国家か】
「2ちゃんねる(2Ch)は間もなく死に体になるだろう。訴訟対応のまずさも大きな要因だ」
2Chの運営に関わる男性は語る。問題ある書き込みをした人物を特定するため、法律で被害者がIPアドレスの開示を請求できる制度が定められた平成14年。男性らは求めに応じて開示するよう勧めたが、2Ch管理人の西村博之氏(29)はかたくなに拒否したという。
「西村は無政府主義の原理主義者。匿名性こそが2Chの存在意義と考えたのだろう」(同)
かくして全国の2Ch被害者が、IP開示や書き込み削除に応じない西村氏の管理責任を問い、民事訴訟する構図が出来上がった。
だが西村氏は判決が出ても「書き込みした人の責任」だから賠償金は払わないと公言、一方でIP開示で責任の所在を明らかにもしない。
北海道情報大の有道出人助教授(41)も勝訴はしたが、西村氏からはなしのつぶてだった。米国生まれの有道助教授は、「米国なら判決無視は法廷侮辱罪。日本の司法システム自体に問題がある」と苦言を呈する。
信じがたいことだが、これまで西村氏は賠償金をビタ一文払っていない。
当然、債権者は資産の差し押さえに動くが、債務者はあくまで2Chを管理する西村氏個人。法人相手と違って「個人口座や不動産など個人資産は特定が難しい」(ある原告の弁護士)のだ。
西村氏が経営する会社には2Chの広告収入などが支払われるが、会社の口座には手が出せない。また、西村氏はIT関連会社「ニワンゴ」の取締役も兼ねるが、「名目上は無給」(関係者)で給与も押さえられない。「別名義の口座のカードを渡す、投資信託に回すなど、抜け道はいくらでも考えられる」(同)
西村氏の昨年の年収は1億円以上とされる。関係者は、「時効成立(判決確定から10年後)まで逃げ切る気だ」と明かす。
債権700万円を持つ化粧品会社「ディーエイチシー」の法務担当は、「金融機関の各支店に絨毯(じゅうたん)爆撃をかけ、西村氏名義の口座がないか探るくらいしか手立てはない。取れたのは数百万円程度。弁護士費用も考えれば、訴訟の採算は合わない」とあきれる。
「どうせお金が取れないなら、弁護士を何人立てても意味がない」
2Chで個人情報の暴露や誹謗中傷に遭った東京都の会社員の男性(35)は、独力でIP開示を求める仮処分を申請した。
法律専門誌「判例タイムズ」1164号に掲載された書式などを参考にし、必要なのは経費約6000円、担保10万円。8日後に裁判所が開示命令を出し、約2週間後には開示まで毎日5万円の過料が西村氏に科される間接強制も始まった。
全国でこうした動きが進み、西村氏の債務は日一日と雪だるま式に膨れあがっている。さらには「ヒューザー」の小嶋進元社長(53)に欠陥マンションの住人らが行ったように、西村氏に対して第三者破産を申し立てた債権者グループもある。
しかし当の西村氏は、≪何の意味があるかよくわかっていません≫(自身のブログ)と余裕の構え。先ごろ西村氏と会談した男性は「西村君はケイマン諸島の税制優遇や金融先物の話に興味津々だった」と打ち明ける。これが法治国家なのか。
(2Ch取材班)
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