スクープレポート 報告書を入手! あらかじめ見捨てられていた東北の被災地「核のゴミ捨て場」に予定されていた双葉町・浪江町・釜石・陸前高田

2011年06月09日(木) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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「幌延町は原発による発電を必要としていないのに、核のゴミは引き受けてくれ、という。理不尽な話です。これは北海道の話ですが、東北地方にも同じように強引な手段で調査が行われたところがあるはずです」

 山内氏が言うように、'06年11月には、日本原子力研究開発機構が岩手県の遠野市で、市には通知せずに地層処分の研究のためにボーリング調査を行っていたことが発覚した。これを知った本田敏秋・遠野市長は調査を即時中止するよう要請した。そのときの様子を、本田市長が語る。

「当初は地質を調べる一般的な調査だと聞いていましたが、ボーリングを使った本格的な調査を行っていたので、おかしいと思ったら、地層処分に関する調査を行っていた。このままでは『日本のふるさと』である遠野が放射性廃棄物処分の候補地になし崩し的に決まってしまうおそれがあったので、即時中止を求めました」

 遠野市を中心に、地域誌「パハヤチニカ」を発行する千葉和氏も、この話を聞いて怒りに震えたという。

「子々孫々に影響を及ぼす放射性廃棄物の最終処分場をここ遠野につくるなど、言語道断です。地震大国日本で、『地層処分は何万年も先まで安全である』と言われても、信じることはできない」(千葉氏)

東北には「上から目線」

「東北地方は歴史的に、東京などへの食料や水資源の供給源としての役割を担ってきました。現在では六ヶ所村をはじめ、エネルギーの供給と、そのゴミの処分も担っています」

 前出・本田市長がこう言うように、この国はいつも東北地方に負担を強いてきた。しかし、水・食料・電気の供給源として、そして「核のゴミ捨て場」として東北を利用してきたというのに、いざ大災害に見舞われたときには、なんとその対応が遅いことか。

「政府は被災自治体に対して、『復興会議の結論が出るまで、復旧作業は待ってくれ』と言っているようだ。これは東北を積極的に見殺しにするという暴挙といってもよい」

 藤井聡・京都大学大学院教授がこう憤るように、5月20日、仙台市で開かれた東北市長会の総会では、国の被災地支援策に対する、市長たちの不満が爆発した。陸前高田市の戸羽太市長は、防災服姿で「国のいろんな規制が、復興の妨げになっている。こちらから問題点を訴えなければ、国は動かないのか」と訴えた。

 おそらくこれは、被災地の全首長、全住民の心の叫びだろう。仮設住宅の設置を進めようにも、建設用地の確保ができない。がれきの撤去も、自治体レベルでは手に負えないためなかなか進まない。これらは、国が手を打てば、簡単に解決することなのだ。

 東北文化研究センター所長で、東北大学名誉教授の入間田宣夫氏はこう語る。

「東北を抜きにして、いまの日本は成り立たなかったはずだ。それを政府はしっかりと認識して、復興に尽力してほしい。東北地域の文化や伝統も考えずに、『新しい住宅はすべて山の上に作ろう』など、なぜ中央はいつも上から目線なのか」

 この「上から目線」がどれだけの苦労を東北の人々に強いてきたか。いまこそ問い直すべきだ。

 

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