本誌は、'05年3月30日に、特殊法人・核燃料サイクル開発機構(核燃機構)が作成した報告書を入手した。この資料は、処分地の選定を進めていた動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が行ってきた、地層処分に関する調査結果をまとめたもの。
「プルトニウム入りの水を飲んでも大丈夫!」というPRビデオを作り、世界から非難を浴びた動燃は、'80年代より全国500ヵ所以上から地層処分を行う『適正地』を探す調査を水面下で進めてきた。これを見ると、北は北海道から南は鹿児島まで、全国88ヵ所の地域が放射性廃棄物の「処分地として適正」であると報告されている。詳しくは後述するが、その4分の1以上が東北と今回の被災地に集中している。
問題は、この調査が自治体に何の説明もないまま行われて、勝手に「地層処分を行うのにふさわしいのはこの地域」という報告書が作成されていたことである。
地層処分は、その安全性についてもいまだに議論が分かれている。地層処分を推進する機関は、「地中深くに放射性廃棄物を埋めることで、放射性物質が簡単に漏れ出すことはない。地層処分は長年にわたって安全かつ確実に廃棄物を管理する方法である」と謳っているが、原発の安全神話よろしく、地層処分の安全性についても「安全とはいえない」と疑問を呈する声も少なくない。原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、こう指摘する。
「頑丈な容器に廃棄物を詰めて地中深くに埋めるのですが、問題は500mの地中に埋めても、いずれ放射性物質が漏れ出すのは間違いないということです。それが何年後なのかはわかりませんが、現在の技術で、数万年後までそれを封じ込めることが可能かどうかは非常に疑わしいのです」
大地震でも安全と言えるか
勝手に処分場を決めれば大変な反発が予想されるので、政府も推進機関も表向きは「住民・自治体の理解なく、調査は進めない」と言い続けてきた。にもかかわらず、裏ではなんの説明もなしに調査を進めてきたわけだ。その背景を、伴氏はこう説明する。
「政府は2030年頃から地層処分を行うというスケジュールを組んでいますので、このスケジュールありきで物事を運んできたのでしょう。地層処分に関する調査を行うには自治体の承認が必要ですが、自治体が立候補するのを待っていたらとても'30年頃の開始には間に合わない。だから、立候補する自治体を待つ一方で、独自に『地層処分を行うのにふさわしい地域』を調査していたということです」
現在地層処分地の選定を進めるNUMOは、「動燃の調査結果は、あくまでもただの調査であって、実際の処分場の選定とは関係ない」(広報部)と釈明するが、伴氏は「利用しようと思えば、いかようにもデータを利用できる」と断ずる。
さらにこの報告資料を丹念に見ていくと、あることに気がつく。福島県の浪江町、双葉町などの福島第一原発周辺自治体をはじめとして、岩手県釜石市、大船渡市、宮古市など、今回の大地震で深刻な被害を受けた東北の自治体の名前がずらずらと並んでいるのだ。
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