憂楽帳

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憂楽帳:安保の虚実

 軍事分野は自国の能力がばれないよう、国と国とのだまし合いである。秘密も多く、不確定な情報に惑わされがちだ。中国の空母もその一つだろう。

 防衛庁(現防衛省)を担当した10年以上前から「中国が空母を持ちたがっている」と言われていたが、中国海軍の能力、技術、それに莫大(ばくだい)な金がかかるため、幹部自衛官は口をそろえて「無理だろう」とみていた。

 それが今、中国の国産空母の保有が現実味を帯びて報道されている。知り合いの元海将に聞くと「想定より進んでいるのは確かだ」と言う。

 一方で、元海将によると、中国には空母のエンジンを作る技術がなく、「国産に成功するとしても20年ぐらい先」と指摘。そのうえで「中国の脅威を煽(あお)り、海自も空母が必要だという人がいる。海自には追い風かもしれないが、世論がそれに乗っかると必要な防衛力整備がおろそかになりかねない。誤った情報なので注意を」と言われた。

 毎日新聞西部版の朝刊で「安保のカタチ」を連載していて、この分野は都合のいい情報が流される恐れがあるのだと実感する。冷静にチェックすることが必要だ。【宮下正己】

毎日新聞 2012年1月24日 西部夕刊

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