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きょうの社説 2012年1月24日
◎土産最高賞に金箔皿 石川の工芸発信のステップに
観光庁が企画した外国人の視点で選ぶ「魅力ある日本のおみやげコンテスト」で、金沢
市から応募した金箔(きんぱく)を張ったうちわ型の銘々皿がグランプリに選ばれた。金箔工芸という金沢のお家芸を、アイデアいっぱいの切り口で記念の品に仕上げた点が評価された。伝統に裏打ちされた「クール(格好いい)」な日本文化の発信地として、金沢の知名度を高めるきっかけにしたい。工芸王国を発信するには、芸術性とともに、楽しく使ってもらえる親しみやすさも必要 だろう。近年はルイ・ヴィトンと輪島塗作家による小物ケースや、九谷焼や山中漆器の技術を施したチェスのコマの制作など、異分野との積極的な交流も盛んになってきている。石川の工芸を世界に発信するステップとして、こうしたコンテストや発表の機会を生かし、大いにアピールしていきたい。 コンテストは今年で8回目となり、観光庁が掲げる「ビジット・ジャパン」の重点市場 となる地域の外国人や、観光、流通などに造詣の深い有識者が審査を行う。これまで県内からは、九谷焼の盃(さかづき)セットやUSBメモリーなども入賞しており、今回のグランプリによって、伝統と現代を結びつける新たな工芸ビジネスが、地元に確実に広がってきたことが伺える。 応募総数720品目の中から、今回グランプリを受けた「うちわ銘々皿“四季”」は、 金沢市の金銀箔工芸さくだが手がけた。樹脂製で扇の部分に金箔が貼られ、四季折々の草花が描かれている。うちわの柄の部分は、取り外してフォークとして使えることから、クールな遊び心も兼ね備えた逸品との評価を受けたようだ。 金沢市でつくられた作品が、日本土産の代表格とのお墨付きを得たことは、ユネスコの 創造都市ネットワークに登録されている金沢市の「クラフト(工芸)」の技術力と芸術性の幅広い力量を、あらためて世界にアピールする追い風になるだろう。 受賞作は成田、羽田、関西、中部の各国際空港内で展示販売される予定というが、この 栄誉を、本物の日本の工芸が息づく金沢への誘客にも生かしたい。
◎きょう通常国会 「四面楚歌」の消費税増税
新聞やメディア各社の世論調査で、消費税増税に反対する意見が増え始め、最近の調査
では軒並み過半数を超えている。野田政権はこれまで「消費税増税を容認する意見は半数近くに達し、国民の理解が広がっている」と繰り返してきたが、昨年秋ごろから反対の声がじわじわと高まってきた。消費税率引き上げを盛り込んだ政府・与党の素案について、新聞各社の世論調査は「反対」が60〜55%前後に達し、「賛成」は30%台にとどまるケースが見られるようになっている。きょうから始まる通常国会は、社会保障と税の一体改革の成否が最大の焦点となるが、 野田政権の消費税増税方針は、今や「四面楚歌」の状況にあるといってよい。 国民が消費税増税に疑問を持ち始めた理由は、はっきりしている。私たちは世界経済が 減速するなかで、景気悪化を招く消費税増税を行えば、円高・デフレがますます加速すると指摘してきた。欧州債務危機や中国経済の息切れなどで、世界経済の「変調」が現実のものとなり、今は消費税を上げるタイミングではないという認識が広がり始めている。 加えて、野田政権が増税にばかり熱心で、無駄の削減に手を付けていないことへの不満 がある。共同通信の調査では、国会議員の定数削減などの無駄削減が実現しない限り「増税すべきでない」との回答が約8割を占めた。社会保障の改革をはじめ、水膨れした予算を徹底的に絞る作業にほとんど手を付けず、増税に前のめりになる姿に不信感を抱く国民は多い。 政府・与党からは、消費税の引き上げ率について、早くも「将来的に10%超への引き 上げが必要」という声が相次いでいる。「10%でも足りない」と強調したいのだろうが、国民の側からすれば、「冗談ではない」という思いだろう。 野田佳彦首相は、消費税増税の前提として、国会議員定数や国家公務員給与の削減を目 指し、野党との協議を進めたい考えだが、自民、公明両党は慎重な構えを崩していない。通常国会は、民主党内の増税反対派の動きも絡んで、波乱含みの展開となりそうだ。
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