きょうのコラム「時鐘」 2012年1月24日

 津波で多数の児童(じどう)が死亡した宮城県石巻市(いしのまきし)の小学校が「人災(じんさい)の部分もあった」と謝罪(しゃざい)した。避難(ひなん)マニュアルや誘導(ゆうどう)に不備(ふび)があったことを認めたのだ

その一方で、岩手県釜石市では一人の死者も出さなかった学校の事例が報告されている。小中学生がお年寄りの避難を誘導したともいう。災害で生死を分けるのは偶然(ぐうぜん)の要素が大きいが、日ごろの訓練の有無(うむ)が決め手になることを示した

防災教育を特集した内閣府(ないかくふ)の広報誌「ぼうさい・冬号」が出た。ポイントは学校でも企業でも、防災教育は日常の学習や業務(ぎょうむ)と切り離してはならないということだ。従来からの学習の中に、防災の視点をとり入れろと提言(ていげん)している

例えば遠足では山や海岸の地形を見る。図工の時間には携帯(けいたい)トイレの作り方を学ぶ。調理(ちょうり)の授業には缶詰(かんづめ)の料理方法を学ぶ。企業も同じだ。自分の仕事が災害時にどういかされるか普段から考えておく。これがビジネス環境(かんきょう)の変化について行ける人材になると説いている

政府広報にしては珍しいほど学ぶ点が多かった。備(そな)えあればの「備え」は具体的でなければ生かされない一例だ。