首都圏連続不審死事件で殺人罪などに問われている木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判は23日、さいたま地裁(大熊一之裁判長)で第8回公判があり、埼玉県内で死亡した大出嘉之さん(当時41歳)の案件を中心とした「埼玉事件」の証拠調べを終えた。検察側、弁護側双方が真っ向から対立する中、裁判員の任期100日のうち19日が経過。審理は24日から、東京都青梅市の会社員、寺田隆夫さん(同53歳)の死亡を中心とした「東京事件」に移る。
大出さんを巡っては「結婚サイトで知り合った大出さんから金をだまし取り、関係を断ち切るため殺害した」とする検察側と「別れ話を切り出され自殺した可能性がある」とする弁護側が対立した。
検察側は、大出さんの母親や兄、勤務先の上司を証人として出廷させ、「(大出さんに)悩みはなく、自殺ではないと思う」との発言を引き出した。弁護側は、木嶋被告が死亡現場に行ったことを認めた上で「大出さんから1万円を渡されてタクシーで帰宅した」とした。
三つの殺人を含む10事件での証人は延べ63人。地裁は20分~1時間程度で休廷を入れ、裁判員が疲れないよう配慮をみせる。
検察、弁護側も工夫をこらす。検察側は、証明すべき事柄を明らかにする「冒頭陳述」を通常の裁判では1回だけだが、今回は審理の進ちょく状況に合わせて既に11回行う異例の対応。さらに時系列や被害者ごとに事件の推移をまとめた2種類の表を配った。弁護側も主張を事件ごとに色分けしたチャート図を配るなど、裁判員の視覚に訴えた。
6人の裁判員と6人の補充裁判員に体調不良などの様子は見られず、午前10時~午後5時ごろまでの審理に真剣な様子で臨んでいる。木嶋被告は、背筋を伸ばしたまま資料に目を通すなど落ち着いた態度が目立つ。【飼手勇介、田口雅士、平川昌範】
09年7月24日、東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん(当時41歳)から現金約470万円を詐取(詐欺)▽同年8月5日、埼玉県富士見市の駐車場に止めたレンタカー内で練炭に火を付け、睡眠薬で眠らせた大出さんを一酸化炭素中毒で殺害(殺人)▽同年7~9月、別の男性3人から現金を詐取しようとした(詐欺未遂)
毎日新聞 2012年1月24日 0時09分(最終更新 1月24日 1時06分)