2011年11月25日 21時12分 更新:11月26日 10時17分
政府の地震調査委員会は25日、東日本の太平洋沖を震源とする地震の発生確率を公表した。南北800キロに及ぶ三陸沖北部から房総沖の日本海溝付近で起こる地震の発生確率について、マグニチュード(M)8以上の規模が今後30年以内で30%とする予測を公表した。東日本大震災に匹敵する大津波が生じる可能性もあるという。また、大震災と同じ震源域で発生するM9級の巨大地震は平均600年間隔と分析した。
地震調査委は、今回のような巨大地震を想定できず、地震規模や確率の評価手法を見直している。
日本海溝付近の領域では、明治三陸地震(1896年)や慶長三陸地震(1611年)など過去に大きな被害をもたらした津波から、地震の規模を予測、統計処理し直した。
その結果、揺れの割に大きな津波を引き起こす特性から、この領域に限り、津波の高さから地震の規模を算出する「津波マグニチュード」(Mt)を採用し、最大規模をMt9と想定。30年以内の発生確率も20%から30%に引き上げた。明治三陸地震(M8.2)では大震災と同程度の高さ38メートル以上の津波が(遡上そじょう)したことから、同程度の津波が襲う可能性があるとした。
これらの地震と大震災では震源が異なるが、この場所では、過去2500年の地層調査から、貞観地震(869年)や大震災など5回のM9級地震が起きたと認定。ただし、大震災でためこんだエネルギーが解放され、M9級の30年以内の確率は0%とした。
一方、これまで地震調査委が予測してきた7領域のうち、宮城県沖はM7.5前後の30年確率を99%と評価していたが、震源が重なる大震災の影響で地殻の変動が続いていることから、発生確率を「不明」とした。三陸沖南部海溝寄りではM7.7前後からM7.9に引き上げられたが、大震災の震源と重なるため30年確率は90%からほぼ0%になった。【神保圭作】
東日本大震災に匹敵する津波を伴う地震の発生確率は今後30年以内に30%とする分析を政府の地震調査委員会が25日、発表した。30年以内に交通事故死する確率は0.2%、火災被害は1.9%だから、かなり高いといえる。対象の沿岸地域は想定に基づいたハザードマップ作製や避難訓練などの対策を急ぐ必要がある。
将来の地震予測は、どこで、どの規模が、どの程度の確率で起きるのかを予測してきた。今回は、従来の予測手法を踏襲しながらも、一部の地震の規模や確率を算出し直した。震災後も続く地殻変動や余震の影響が考慮されていないといった不確かさを伴うが、原子力発電などの施設では早急に対策に反映させなければならない。
一方、こうした地震の確率論的な評価は「いつ」起きるか知ることが本質ではない。地震調査委の阿部勝征委員長も「公表した確率は、早く地震が起こることを意味するのではなく、起こりやすさを示している」と説明する。数字の持つ意味を理解し、投資などの対策を決める議論の材料とすることが重要だ。
また、想定している地震が、東日本の太平洋沖で起きるすべての地震を網羅しているわけではない。予測を超える事態も起こり得ると認識すべきだろう。それが東日本大震災の最大の教訓といえる。【八田浩輔】