2011年11月24日 21時23分 更新:11月24日 21時44分
玄葉光一郎外相は24日、在日米軍で働く民間米国人(軍属)が、公務中に起こした事件・事故について、米国が訴追しない場合でも、米側の同意があれば日本で裁判を行うことができるよう日米地位協定の運用を改善することで日米両政府が合意したと発表した。地位協定17条は、米軍人・軍属による犯罪の第1次裁判権について公務中は米側に、公務外では日本側にあると規定。このため公務中の犯罪はほとんどが訴追されず、米軍基地を多く抱える沖縄県などから改善を求める声が上がっていた。【坂口裕彦】
地位協定の具体的運用を話し合う日米合同委員会で23日に合意した。玄葉氏は「(地位協定の)改定というよりは、運用の改善。一つの前進だ」と語った。日米両政府としては、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題に絡み、沖縄の負担軽減を図る狙いもあるとみられる。
合意によると、米側が公務中に罪を犯した軍属を刑事訴追するかどうかをまず決定し、日本側に通告。訴追しない場合は、日本側は30日以内に、日本で裁判にかけることへの同意を米国政府に要請できる。これを受け、米側は、被害者が死亡したり、重傷を負った場合などは、日本側の要請に「好意的考慮」を払い、それ以外の犯罪でも「日本政府の特別な見解を十分に考慮」するとした。米側が同意すれば日本で訴追することになる。
これまで、米軍が「公務証明書」を発行するなど公務と認定した場合、日本の検察当局は「第1次裁判権がない」として不起訴処分にしてきた。しかも、軍属は平時には軍法会議にはかけられないことになっている。このため、軍属は公務中の犯罪なら、日本でも米国でも処分を受けないことから「法の空白」と指摘されていた。
見直しの契機となったのは今年1月、沖縄市で米国人の軍属男性が帰宅途中に日本人の男性会社員(当時19歳)を死亡させた交通事故。那覇地検は3月、日米地位協定に基づいて「勤務先からの帰宅途中で公務中にあたり日本に第1次裁判権がない」とし、男性は米軍による運転禁止5年間の懲戒処分にとどまった。しかし、那覇検察審査会は5月に「起訴すべきだ」と議決し、那覇地検が再捜査。25日が再捜査期限になっていた。日米両政府は今回の合意以前に起きたこの事故についても、新たな枠組みを適用することで合意した。