名古屋市立向陽高(同市昭和区)で柔道部の練習中に頭を打って亡くなった倉田総嗣さん(当時15歳)の母、久子さん(51)が18日、市内で報道陣の取材に応じ「柔道というスポーツは危険をはらんでいるということを、指導者、子ども、保護者に知ってもらい、どういう練習をすればいいか考えてほしい」と、安全に配慮した指導体制を教育現場に整えるよう求めた。
中学時代は美術部員だった総嗣さんは、中学卒業前に「体を動かしたい」と言い出し、柔道を始めたばかりだったという。久子さんは「私が知っている柔道は、五輪で日本人選手が頑張っているとか、小柄な人や子どもでも習っているという印象。だから、危険とは考えていなかった」と悔やんだ。
総嗣さんが亡くなった後も、11年9月に三重県四日市市で柔道部員が重傷を負うなどの事故が続いていることについて、それぞれの事故の検証と安全な指導体制の確立を求めた。12年度から中学で武道が必修化することについても疑問を呈し、「柔道人口が増えても、絶対に息子のような事故は起きてほしくない」と願った。
総嗣さんは11年6月、練習中に大外刈りの技の受け身を取ろうとして後頭部を強打。同年7月、急性硬膜下血腫で亡くなった。久子さんは「自分が柔道事故の危険性を知らずに子どもを死なせてしまい、後悔している。多くの人に危険性を知ってほしい」との思いで、取材に応じたという。【福島祥】
毎日新聞 2012年1月19日 地方版