秋入学への全面移行を目指す東大の浜田純一学長は20日、入学時期を国際標準に合わせる意義を強調した。他大学と連携して導入を図る考えだが、ギャップタームの過ごし方や春一斉に新卒者が入社する日本の就職慣行、あるいは大学運動部のスケジュールなど課題も浮かぶ。
浜田学長は日本社会の現状について「これまでの国際化は、とりでを構え、柵をめぐらした中からちょいちょい手を伸ばしていた」と指摘。そのうえで「これからは柵を取り払い、大平原の中で国際社会とぶつかり合っていくことが必要な時代だ。秋入学で日本の大学が世界の大学と初めて同じ平面に立つ」と力を込めた。
部活動など課題も だが、東大をはじめ一部の大学が秋入学に移行した場合、教育研究や就職だけでなく、部活動などの大学間交流にも影響する。スケジュールがずれれば、春秋にリーグ戦を行う東京六大学野球などの定期戦の日程も見直しを迫られそうだ。浜田学長も「小さな問題とは考えていない」といい、検討する考えを示す。
一方、東京大が秋入学を検討する大学間の協議会設置を呼びかけたことについて、名前が挙がった各大学からは議論に期待する声も聞かれた。
秋入学の検討委員会を来月にも発足させる九州大は、福島泰広報室長が「正式要請があれば会合で議論したい」と述べた。北海道大や東京工業大も参加を前向きに考えるという。
清家篤・慶応義塾塾長は「(秋入学の)必要性や課題についても東大と問題意識を共有する部分も多い」といい、一橋大の山内進学長は「グローバルな知の共同体を作り上げるため、一重要項目として秋入学を検討することは必要」とのコメントを出し、議論の必要性を強調した。
東北大の井上明久学長は「世界では7割以上が秋入学。東大主導というより東北大が主体的に考えたい」と意欲を示した。
一方、大阪大は「現時点で全く中立的な立場。東大の提案を踏まえて今後検討したい」(日比謙一郎総務課長)と、秋入学の賛否について言及を避けた。
名古屋大の山本一良理事・副学長は「複数の大学で検討するのは良いことだが、社会的コンセンサスがなければただのわがまま。実現に向かうかはこれからの議論だ」と話した。【木村健二、遠藤拓、長野宏美】
毎日新聞 2012年1月20日 21時52分(最終更新 1月20日 23時07分)