大阪・ミナミの中心的存在の難波。高島屋がある南海難波駅北側に比べて集積に乏しかった駅南側に人の流れが拡大している。南海ホークスの本拠地、大阪球場跡を中心とした14.5ヘクタールの難波再開発が進み、「なんばパークス」など新しい施設が続々と開業したからだ。南海電気鉄道やクボタなど地権者が進めてきた球場跡の再生は今年3月、スタートから25年で完了する。
駅の南西側に2007年に全面開業した「なんばパークス」がある。ここから南へ伸びる900メートルの道路が3月に完成する。道路沿いには今や超高層オフィス、マンション、ヤマダ電機の大型店舗が並ぶ。かつて球場が立ち塞がって道路はなく、人通りは少なかった。
■剰余金28億円
球場跡の「なんばパークス」の10年度の来場者は2816万人だった。ホークス最後の年、1988年の大阪球場の入場者は45万人で、周辺施設と合わせても90万人程度。30倍以上を集客する計算だ。
区域内の南寄りに今春、2500人収容のライブホール「Zepp Osaka」が開業する。年100万人の集客が期待できる。にぎわいは南に広がっていく。
難波再開発は区域内の道路や敷地を造っていく土地区画整理事業だ。新しい施設の用地を提供すると同時に、容積率を上げ開発をけん引した900メートルの道路を計画した。
「道路は大阪市役所が造ったのではない。民間企業が造った」と南海の金原克也取締役不動産営業本部長は胸を張る。南海、クボタ、ニッピ、高島屋を中心に保有地を減らし、道路用地や工事費を確保した。税金は使っていない。
87年、地権者が研究会を発足し、再開発が動き出した。当初、50階と30階の2棟の超高層オフィスビルを建設する計画はバブル崩壊でオフィス需要が急減。1棟は断念し、オリックスグループが46階建てマンションを建設した。オフィスは30階建て1棟だけになったが「4000人の雇用があり、難波の昼間人口を支えている」(金原取締役)。
実質で約64億円の区画整理の事業費の調達にも苦労した。合計2500平方メートルの土地を売却すれば賄える計算だったが、地価下落で1万5000平方メートルが必要になった。南海は9000平方メートル、クボタは5000平方メートルの所有地を減らした。クボタは自社ビルを一部撤去し、地下駐車場を埋め戻して道路用地にした。
3月に区画整理の事業が終わるが、28億円の剰余金が出る見通し。南海など地権者に分配される。バブル期に計画した行政主導の開発は追加投資を迫られるケースが多く、これとは対照的だ。
■未利用地残る
区域外にも波及効果が出ている。隣の木津市場がスーパー銭湯、外食など従来少なかった集客施設を整備した。「再開発エリアを訪れる人を呼び込みたい」(同市場)という。
高島屋は昨春、増床を完了し、売り場面積は4割増の7万8000平方メートルになった。12年2月期の売上高は1219億円と前年同期で6%増を見込む。ピークだった91年度の2000億円より4割少ないが、反転攻勢をかける。南海は本社を再開発区域内で建設中のビルへ来春移転し、現本社を超高層の商業業務ビルに建て替える。
ただ、難波全体の課題も多い。大阪市が保有する精華小学校跡は今年度中の予定だった売却のメドが立っていない。新歌舞伎座の跡も未利用のままだ。難波再開発区域内でもクボタ本社の将来の建て替えが未定のほか、未利用地が残る。
大規模な商業施設が集積する梅田に比べ、難波駅周辺は地価の下落幅が大きい地点が目立つ。開発可能な土地にどのような施設を誘致できるかが、にぎわいを左右する。
(大阪地方部 清水英徳)
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