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青森・再処理工場 月内にも放射性廃液ガラス固化試験再開
 | ガラス溶融炉の模式図。希少金属が炉底にたまる不具合をクリアすることが試験成功の鍵を握る(日本原燃提供) |
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日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が、高レベル放射性廃液ガラス固化試験の再開に向け準備を進めている。約3年ぶりに今月下旬にも始まる試験の課題は、廃液に含まれる希少金属がガラス溶融炉の底にたまる不具合を克服できるかどうか。原燃は炉内温度を徹底管理する改善策で、試験完了を目指す。試験の成否は福島第1原発事故で先行きが不透明になった核燃料サイクル政策に影響しかねず、再処理工場は正念場を迎える。
再処理工場はプルトニウムとウランを抽出する。廃液は安定した状態で処分するため、溶融炉でガラスに混ぜ込んで「ガラス固化体」を造る。 試験は試運転の最終段階で4月に再開を予定したが、東日本大震災の影響で延期された。固化体百数十本を造り、炉の運転状況などを確認する。 炉はじょうご状で2系統ある。試験は不具合が続いた系統ではなく、試験で本物の廃液を使っていない別の系統で始める。10日に炉に入れるガラスの温度を上げる熱上げ作業に入り、約2週間で1000度以上にする。確認作業を経て、炉に模擬廃液を入れれば再開となる。 原燃は茨城県内で炉の実物大模型を使い、不具合の改善策を検討してきた。改善策が本物の廃液などでも効果的かどうかを実際の炉で調べる「事前確認試験」を、数カ月間行う。次に2系統の炉で最大能力時の運転状況などを確かめる「安定運転.性能確認」を実施。試験完了後、国の審査を経て10月の完工を目指す。 炉底に希少金属のたまる不具合は、07年11月に始まった試験がたびたび中断に追い込まれた難題。試験は、復旧のため炉内をかき混ぜる金属棒が曲がったトラブルで、08年12月に中断したままだ。 炉は電気を流すなどしてガラスを溶かす。希少金属は電気を通すためガラスが溶けづらくなって粘り気が増し、炉下部のノズルから流れ出しにくくなる。 原燃は改善策で炉内の温度計の測定点を増やし、ガラス温度の監視を強化。希少金属を炉から除く「洗浄運転」を定期的に行い、不具合を防ぐ。 溶融炉の不具合克服のほかに心配なのが、さまざまなトラブル。09年は3度の高レベル廃液漏れが発生し、10年は炉底に落ちた天井れんがの回収、高レベル廃液濃縮施設の廃液漏れ対応などで復旧に長時間を費やした。 原燃は「トラブルの対応は学んできた。入念に準備をして試験を再開したい」(川井吉彦社長)としている。
2012年01月23日月曜日
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