【政治と検察】
鷲見一雄の視点=うそをつく検察と小沢弁護団の公訴棄却申し立て
●小川敏夫法相
09年9月16日、政権が自公連立から民主党に政権が交代してから日本の検察は様変わりした。政府と検察の間に信頼関係があるのか、ないのか不透明、民主党の最高実力者の小沢一郎が刑事被告人となっているからだ。
検察は「厳正公平、不偏不党」がタテマエだかおかしくなった。
野田改造内閣の法相は周知のように小川敏夫。立教高校から立教大法学部卒、70年司法試験合格、73年司法修習終了、25期。笠間検事総長の1期先輩である。同年判事に任官、静岡地裁沼津支部判事補となったが、76年から検事に転向、東京地検、福岡地検、横浜地検に勤務、81年に弁護士に転身、東京弁護士会所属。63歳。
98年の参院選に東京都選挙区から出馬、当選。以来当選3回。法務副大臣の経験を持つ。菅前首相に近い。
小川は法相就任直後、元東京地検特捜部所属の田代政弘検事(44)が作成した捜査報告書に虚偽の記載があった問題について、法務省内での記者会見で、「内容が虚偽、あるいは誤った捜査報告書が出ていることは大変重要なこと。具体的事実を確認し、早期に厳正に対応したい」と言明した。
●検察は誰のためにあるのか
周知のように小沢を起訴したのは検察審査会の2度に亘る「起訴相当の議決」に基づいた指定弁護士。
これに対し、小沢の弁護団は公訴棄却を申し立てている。3人の元秘書の証人尋問、小沢に対する被告人質問の供述では無罪の展望が見込めないからとしか考えようがない。指定弁護士の公訴にはつけいる隙はないが、検察には隙があると考えたのだろう。だから公訴棄却の根拠は田代検事が作成した虚偽の内容が記載された捜査報告書。東京地検はどういう意図でその捜査報告書を検察審査会に出したのか、は不明だが、小沢に対する不起訴処分の当否を審査する機関に出したことが不適切であることは間違いない。検察と政治裁判の専門家を自任する私の視点では開いた口が塞がらない。これが大物政治家の権力犯罪をチェックする、法の番人である検察か、これが日本の政治を動かす最高実力者の見識なのか、と呆れる思いがするからだ。
いうまでもなく検察は刑事司法の要であり、法益を保護する機関、その検察は今、「厳正公平、不偏不党な機関であるか、どうか」が問われている。法律専門家でもある小川法相に言明通り厳正な対応を期待する。それでないと国民は「民主党政権における検察とは何か」を理解できないと思うからだ。(敬称略)