初優勝し支度部屋で母親ティーナさん(左)と喜ぶ把瑠都=両国国技館で
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◇初場所 千秋楽(22日・両国国技館)
初優勝を決めていた大関把瑠都(27)=尾上=は、横綱白鵬(26)=宮城野=に寄り切られて全勝はならなかった。白鵬は12勝。稀勢の里は琴欧洲を寄り切り、新大関場所を11勝で終えた。琴欧洲は10勝5敗。大関琴奨菊(27)=佐渡ケ嶽=は日馬富士に勝って、ようやく勝ち越した。日馬富士は4敗。関脇鶴竜が2場所連続で10勝を挙げた。把瑠都が綱とりに挑む春場所は3月11日に大阪府立体育会館で始まる。昨年は八百長問題の影響で中止されたため、2年ぶりの開催となる。
感極まった把瑠都が、大粒の涙を流した。土俵上で行われた優勝インタビュー。西の花道上のマス席で立ち上がって応援旗を揺らす母のティーナさんと正座して両手を振るエレナ夫人の姿を確認した時、それまでこらえていたものが一気にあふれ出た。
「いつも、いつも支えてくれてありがとう。お母さんがいなければ私はここにいない。私を産んでくれてありがとう」
この日朝、来日したばかりのティーナさんはエレナ夫人とともに直接、成田空港から国技館に駆けつけた。記念撮影のため先に待っていたティーナさんは支度部屋で対面。エストニアの国旗を息子の肩に掛け、10秒ほど抱き合った。
「成田に到着した時から今、この時まで気持ちは高まっていました。すごくうれしい。今朝会ってなかったので、すぐハグしてやりたかった。涙が出るぐらいうれしい」とティーナさん。エレナ夫人も「感動して泣きそうになった。幸せです」と瞳を潤ませた。
年6場所制となった1958年以降8人目の大関による全勝優勝は惜しくも達成できなかった。「残念です」と首をひねった把瑠都だが、力を出し切った充実感の方が悔しさを上回る。
◆「上目指し頑張る」
「最後まであきらめず頑張った。(今場所は)立ち合いが良かった。最初はバタバタしたけど、どんどん良くなった。今までやってきたことが無駄ではなかった。やればできるもんです」
来日して8年。一緒にエストニアからやってきた北欧司は角界になじめず、わずか半年で帰国。何も知らない異国の地で孤独に耐えながらも必死に精進を続け、やっと優勝賜杯を手にした。
そして次の3月、春場所は綱とりがかかる大切な場所となる。「もうひとつ上を目指して頑張りたい。気を引き締めて今場所みたいな相撲をとれば今年はいけるんじゃないかと思います」と手応えたっぷりに胸を張った。
家でエレナ夫人と相撲の話題はほとんどしない把瑠都だが、将来の夢は良く口にする。「いつか牧場をやりたい、と言ってます」とエレナ夫人。その前に大阪で綱とりを実らせ、角界の頂点へ突き進んでいく。 (竹尾和久)
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