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日々の色々・The colour of the sun

2010-01-09 不思議な函館、懐かしい札幌、grittyなベルリン このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

開けましておめでとうございます。しおです。今回はお正月ではなく、その前の旅行について話したいと思う。

今年のクリスマス休みは北海道で過ごした。JR函館フリーきっぷを買って、電車で函館まで行って、その後は札幌にも行ってきた。函館を訪れるのが2回目、札幌も2回目。両方も初めてに行った時は夏だったが、今回は冬。

やっぱり、函館は冬の街だなーと、函館駅に着いたらすぐ思った。街が雪で覆われると函館の魅力が見えてくる。

金森倉庫の辺りは感動的でした。今年のクリスマスツリーはカナダハリファックス市から輸入されたらしいけど、正直言うとカナダ人の私はあんな綺麗な木を見るのが初めてかもしれない。点灯は素晴らしかった。

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(函館の夜景 - Photo by Flickr user mamacharikinoko)

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(相馬株式会社 - Photo by Flickr user mamacharikinoko)

それに加えて、背景にあった函館の特有な建築が西洋人の私にとってかなり不思議に感じた。特に元町の辺りは、前時代の倉庫が並ぶ出身のモントリオールの港周辺と似ているところも多い。両都市も、雪の下の静かさと、歴史にあふれている建築、その特徴的な組み合わせが深い雰囲気を作る。

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(モントリオールの港の辺り - Photo by Flickr user PnP!)

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(函館の金森倉庫 - Photo by Flickr user mamacharikinoko)

とは言っても、函館建築の原点は地球の反対側にある。土地は日本の一部にすぎない。金森倉庫から一歩離れると、その現実をよく感じる。少しずつ、西洋にいる幻想が崩れる。慣れてきた日本でもないが、懐かしい西洋の街でもない。

建物は上半が丸で百年前のアメリカにぴったりだが、下半は間違いなく日本の木造の家屋。進化のずれた道に進んだ妙に綺麗な動物みたい。

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(進化のずれた道に進んだ妙に綺麗な動物みたい - Photo by Flickr user mamacharikinoko)

それが、西洋人の私にとって函館の不思議さ。

次に訪れた札幌は、歴史の面でも、地理の面でも、函館とだいぶ違う街。東京のゴチャゴチャの裏道、その狭くて迷いやすい路地、そのあちこちで残っている昔の跡、今まで慣れてきた日本の都会とは別の構造。逆に札幌は、北米の街と同じように、街路が四角い形、街全体の構造が格子状。車の街とも言える。特に冬だと、トロントやオッタワなど、カナダの街っぽい。

1857年には、札幌にはまだ7人しかいなかったらしい。現在の人口は200万人に近いが、そのほとんどは地方から引っ越してきた。札幌の人口は増えていくのに比べて、北海道全体の人口が減ってきたという。

こういう札幌は、建築的に綺麗だとは言えないだろうし、街の形から見ても別に面白いとは言えない。東京と比べて、道に迷うことはほとんどないし。車があれば便利な街だろうけど、私は運転もできないし、しかも車きらい。

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(すすきの - Photo by Flickr user mamacharikinoko)

でも車が嫌いな私にとっても、札幌に憧れるところもあった。函館より、札幌のほうがずっと「都会」に見えるのもその一つ。ささきのの周りはとくにそう感じた。

英語では「gritty」という形容詞があるけど、どこまで探しても日本語には同じような意味の言葉は見つからない。直訳すると、(英辞郎によると)「砂利の入ったような」や「ザラザラする」など、「ほころだらけの」みたいな文が出てくるけど、私が伝えたい気持ちとだいぶ違う。

私に取って典型的な「gritty」な街はドイツベルリン、特にその東の方。ひびの入った壁、前時代共産主義東ドイツの建物も並んでて、戦争の跡もあちこちに残ってる状態。綺麗な街ではないのだが、かなり感動的。道で散歩するだけで、その歴史的な重さを感じるわけ。そして、その重い雰囲気のおかげで、自分の存在の小ささも実感する。

その反面、ベルリンアート系な街、音楽の街、クリエイティビティの街とも言える。「TACHELES」というギャラリー・カフェは東ベルリンのその典型的な例。10年前に初めてベルリンに行ったときに、どこかのそのようなカフェに入って、そこで、その歴史の重さに囲まれている環境で、コーヒーを飲みながら雑誌を読んだ、という懐かしい思いでがある。

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(TACHELES - Photo by Flickr user inky)

grittyな都市環境の中で、クリエイティビティが生まれる。ベルリンエレクトロニック系音楽はそういう環境の成果の一つ。

でも「gritty」という言葉を日本人に説明するために訳そうとすると、どうしても「汚い」という別の意味になってしまう。お寺や神社以外、日本人は古い建物を壊して、新しくて「綺麗」な建物を作るのが好きなわけで、ベルリンにあるような中途半端な、歴史的で前から残っている建物は少ない。「汚い」イコール「よくない」という考え方がその背景にあるかも。確かに、日本の一番「gritty」なところは社会に捨てられたところ。軍艦島などみたいな廃墟。

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(日本の「gritty」 - Photo by Flickr user snotch)

正直言うと、私はだいぶ前からそのようなところの雰囲気を憧れている。東京はかなり面白い街のだが、「gritty」なところは少ない。しかも、下北沢みたいなそういうgrittyなところを都市が壊そうとしている

でも函館も、札幌も、規模が違うけど両方もそれぞれなりの「gritty」なところもあった。札幌の場合は、歴史がかなり短いからこそ、他の日本の街とは違ってまだ定着していない状態。でも不思議なことに、外から見ると大した建物ではないのに、7階まで登ってみると素敵なカフェもある。同じ四角い形のカナダの街にはありえない発見のだが、これはやはりカナダではない。初めてベルリンに行ったときのカフェ冒険を思い出した。

函館札幌ベルリンモントリオール出身の私は、今回の旅行、都市環境の大切さを痛感した。

さくらさくら 2010/01/11 15:31 私も古い町並みが好きなので、日本人の、古い建物を壊して新しいビルを建てるという感覚が、あまり好きではありませんでした。
しかし最近気が付いたのですが、日本とヨーロッパなどの建築材料の違いが、大きく関係してる気がするのです。(日本は材木・ヨーロッパは石。耐久年数が違う。) これは私の想像ですが、これから、今あるビルを、全部木造建築に立て直そうとすとすると、日本の面積・人口なども考えても、森などはすぐに木がなくなってしまう気がします。
観光客は、古い歴史のある街が良い。しかしそこに住んでいる人達は、便利な方が住みやすい・・・う〜ん、色々な問題が詰まっていると思います。でも、最近立て直されている都市などは、どれも同じで、つまらないのは事実ですけどね。

colourofthesuncolourofthesun 2010/01/20 21:48 さくらさん

コメントありがとうございます。日本の伝統的な家の作り方という視点から見ると、やはり西洋の建物との違いがよく分かると私も思います。でも、私は別に木造建築にこだわっていません。例えばコンクリートで作られた建物でも、早く壊す傾向がよく見えると思います。同潤会アパートはその一つの例です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E6%BD%A4%E4%BC%9A%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88
http://www.theforeigner-japan.com/photoessays/2004/200405/

こういう写真を見ると、かなり悲しいとしか思えないです。

http://www.tokyoshoes.com/blog/archives/000085.html

なので、これは「木造だから」というわけにならないと思います。逆に、「古い、だから汚い」ということがもともと原因だと思います。日本の好きなところはたくさんあるのですが、こういう考え方は本当に許せないです。たぶんその考え方は、さくらさんが書いたように、木造建築の歴史と関係するかもしれないですが、別の材料にしても、同じパターンが表れます。(軍艦島は例外ですが、それは無人島だからあまり壊す必要がないわけけだと言えますね。)

GinkgraphGinkgraph 2010/03/13 18:59 こんにちは、函館は以前私も行きました。小さくてエキゾチックな美しさがある、日本人の目から見ても不思議な街だと思います。

「gritty」という感覚、私も適切な言葉が思いつきませんがよくわかります。同潤会アパートは大好きな建物でした。壊されたときはとても残念でした。最近は「廃墟マニア」のような人たちも増えてきて、古い建物をもっと保存しようという動きも広がってきているようです。ちなみに「gritty」を日本語で表現しようとするときには、私は「趣き深い」「歴史的なたたずまい」「風情がある」みたいな言い方をします。これも完璧ではないですけれどね。