日本初の本格的な軽乗用車として高度成長期に生産され、丸みを帯びたボディーから「てんとう虫」の愛称で親しまれた富士重工業の軽自動車「スバル360」が、電気自動車としてよみがえる。府立佐野工科高(泉佐野市)の自動車部員がスクラップ寸前の中古車を、蓄電池とモーターで動く電気自動車として復元することに成功、20~23日に大阪市住之江区のインテックス大阪で開かれる「大阪モーターショー」に出展する。【山田泰正】
◆「マイカー」定着
スバル360は1958年に製造が開始され、12年間で39万2016台が生産された。原型車は全長2・99メートル、全幅1・3メートル、全高1・38メートル、重量385キロ。排気量356CCという小さなエンジンながら、大人4人が乗って時速約80キロで走行できる設計。実用的な大衆車として支持を集め、消費者に「マイカー」という言葉を定着させた。
◆ナンバーも取得
最近の環境への関心の高まりとガソリン価格の高騰を受け、電気自動車が注目を集めていることから、同部顧問の山田啓次・首席教諭(43)が乗用車をベースにした電気自動車の試作を提案。改造技術の習得と関係官庁への申請業務について習熟するのが狙いで、廃車寸前のスバル360を中古車業者から3台入手し、うち2台を部品取り用とし、状態の良い69年製の1台を改造することにした。
10年12月から4カ月間かけ部員たちが手入れや部品の交換を進め、まずガソリン車として走れるように整備。昨年3月には公道上を走れるようナンバープレートも取得した。その後、エンジンを取り外し、モーターや蓄電池を搭載。電流計などの計器類も自前で製作して取り付けた。板金や内装などの専門作業は地元の自動車修理工場などが協力。生徒たちが通って新車同様に仕上げた。
◆時速80キロ
動力源は1個3・4ボルトのリチウムイオン電池24個。フォークリフト用のモーターを接続し、時速80キロ程度は出るという。19日には校内での走行試験を済ませて会場に搬入。同部キャプテンの宮内雄大さん(17)=電気系電子制御専科2年=は「生産中止から40年以上たつ古い車なのにデザインが新鮮なのにびっくりしている。昭和の名車が電気自動車として走る姿を見てみたい」と期待。指導に当たった山田教諭は「自動車製造は部品製造やプラスチック成形などさまざまな関連産業を生み出し、泉州の新たな地場産業にもなり得る。そのきっかけになればうれしい」と話す。
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会場では、3号館のエコカーの特集コーナーに展示される。問い合わせは運営事務局(06・6456・2777)。
毎日新聞 2012年1月20日 地方版