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被災情報漏らし現金 加重収賄容疑で石巻市元臨時職員逮捕
 | 石巻市災害廃棄物対策課の家宅捜索を終え、資料などの入った段ボールを積み込む捜査員=20日午前5時ごろ、石巻市穀町 |
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東日本大震災で被災した建物の解体事業で、解体を望む建物の所有者名などを不正に漏らした見返りに、業者から現金を受け取ったとして、宮城県警捜査2課と石巻、河北両署は19日深夜、加重収賄の疑いで、石巻市災害廃棄物対策課元臨時事務補助員今野貞一容疑者(47)=石巻市清水町2丁目=を、贈賄の疑いで、同市の建築土木会社「サプライズ・ホーム」元営業担当佐々木咲枝容疑者(60)=同市貞山1丁目=を逮捕した。両容疑者は容疑を認めているという。 逮捕容疑は、今野容疑者は昨年5〜7月、公費での解体を望む被災建物の所有者名や連絡先を佐々木容疑者に漏えいし、見返りとして9月中旬、同市内で佐々木容疑者から現金20万円を受け取った疑い。県警によると、東日本大震災に絡む贈収賄事件の立件は全国初。 捜査関係者によると、佐々木容疑者は今野容疑者から得た情報で営業活動をし、数件の工事を受注したという。現金は受注の謝礼とみられる。 石巻市によると、二次災害の恐れがあるなど、一定の基準を満たした被災建物の解体は、所有者の申請があれば費用の全額が公費で負担される。業者は被災者が選ぶことになっていた。市は相談に訪れた被災者に、公共工事の登録業者リストを示していたが、サプライズ・ホームはリストに掲載されていなかった。 県警は、佐々木容疑者が登録業者に先駆けて受注するため、解体希望者の情報を不正に入手しようとしたとみて捜査。賄賂が同社の経費だったかどうかも調べる。 市によると、今野容疑者は米穀販売業を営んでいたが、震災で職を失ったとして、市の臨時職員に応募。昨年5〜10月、被災建物の解体・撤去に関する相談や、申請を受け付ける窓口業務に就いていた。 サプライズ・ホームは二次災害の恐れがある家屋解体を市内で19件請け負い、うち18件分の工事代金として約3300万円を市から受け取っている。事業所の解体工事も25件受注し、うち15件の工事代金約6000万円が市から支払われているという。 県警は20日未明、市役所の災害廃棄物対策課や両容疑者の自宅を捜索。20日午後に両容疑者を送検した。
◎復興急ぐ行政のチェック甘く/解体工事に「うまみ」
東日本大震災で被災した石巻市の建物解体工事をめぐり、現金授受があったとして市の元臨時事務補助員と工事業者が逮捕された汚職事件。解体工事のスピードを優先させるあまり行政のチェック態勢は甘くなり、建設業者は復興事業の「うまみ」を得ようと違法行為に手を染めたものとみられる。 「震災前の2倍程度の工事費なら、ほとんどノーチェックだった。もっとふっかけていた業者もあったと聞いている」 「解体を望む被災者さえ見つけられれば、確実に稼げた仕事。業者としては一件でも多く受注したかったはずだ」 石巻市内で住宅や事業所の解体工事を請け負った建設業者らは、そう証言する。 事件の舞台となった解体工事は、倒壊など二次災害が起きる可能性がある被災建物をいち早く撤去するため、契約条件を緩和して実施。昨年8月10日の受け付け終了まで、市内の申請件数は1500件に上った。 加重収賄容疑で逮捕された今野貞一容疑者(47)が携わっていた窓口業務だけでなく、申請書類の確認作業なども臨時職員が担った。 作業に携わった経験がある男性は「必要書類がそろっているか確認するだけ。自分たち素人では工事費が妥当かどうか、チェックのしようがなかった」と打ち明ける。 建設業の許可さえあれば、市の登録業者以外でも参入が可能だった。関西地方の業者や、解体工事の実績がない建設会社などが請け負うケースも多かったという。 贈賄側の「サプライズ・ホーム」は2004年に設立。元幹部の男性(44)によると、同社の社員は数人で、主に住宅建築やリフォームを手掛け、最近まで解体工事はしていなかった。 贈賄容疑で逮捕された佐々木咲枝容疑者(60)は、石巻市内でコンパニオン派遣会社の経営者として知られていた。同市の商業団体関係者は「建設業にかかわっていたとは全く知らなかった」と話す。
2012年01月21日土曜日
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