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きょうの社説 2012年1月22日
◎福井先行開業案 石川、富山も歩調合わせて
昨年末に北陸新幹線金沢−敦賀の着工が決まったことを受け、福井県内で福井までの先
行開業を目指す案が浮上している。火付け役は経済界で、できれば2018年に開催される福井国体に間に合わせたいという希望があるようだ。政府・与党は金沢―敦賀の工期を14年間としており、それだけ待つのは長過ぎるとい う福井県関係者の思いは理解できる。福井までの整備を18年に終えるとなると、福井駅部が既に完成しているとはいえ、時間的な余裕が乏しく、実現は容易ではないと思われるが、「国体までに」という点にこだわらなければ、可能性はあるのではないか。福井県関係者が政府・与党に対し、本気で福井先行開業を求めていくのであれば、石川、富山県も歩調を合わせることを考えてはどうだろう。 福井先行開業のメリットを享受するのは福井県だけではなく、石川県にとっては、県内 全区間の整備が予定より早く完了し、加賀地区にも新幹線効果が十分に届くようになることを意味する。▽県の単年度の建設負担金が増える▽並行在来線の引き受けまでの準備期間が短くなる▽金沢の「終着駅効果」を手放す時期が早まる−などといった課題を抱えることを考慮しても、検討に値する案だ。 富山県にとっても、福井先行開業が実現すれば、金沢開業時の課題とされている関西や 中京との行き来の利便性が改善されるわけだから、歓迎すべきことだろう。経済的にも文化的にもつながりが深い北陸3県の県都が、新しい高速交通基盤によってより強固に結ばれるという意義も大きい。 もちろん、最も望ましいのは福井先行開業が認められた上で、敦賀までの開業時期も前 倒しされることである。金沢−敦賀を整備する目的の一つは、大規模な災害に備えて国土の東西をつなぐ交通網を多重化することであり、東海地震などがいつ起きてもおかしくないとされているのを考えれば、悠長に構えていられないのは自明だろう。3県には、全体の工期短縮についても、足並みをそろえて政府・与党に要請することをあらためて求めておきたい。
◎独法、特会の改革案 歳出削減の効果分からぬ
「事業仕分け」などを実施していた政府の行政刷新会議が廃止され、公務員人件費の削
減や国有資産の売却などを手掛ける「行政構造改革実行本部」(仮称)を新たに設置する方針が固まった。効果が薄く、パフォーマンス優先と批判された事業仕分けを手掛けた不人気の組織や閣僚をお払い箱にして看板を掛け替え、消費税増税に向けて「身を切る」ポーズを示すつもりだろう。だが、行政刷新会議が置き土産にした独立行政法人(独法)や特別会計(特会)の改革 案は、いかにも付け焼き刃で、中身に乏しい。「102の独法を統廃合や民営化で4割削減して、65法人に削減する」「特会は社会資本整備特別会計などを廃止し、17から11に減らす」というが、藤村修官房長官が会見で「改革の目的は予算的なことではない」と述べたように、歳出削減の効果も不明である。独法の削減は目標の5割に届かず、特会の削減を含めて数合わせの印象がぬぐえない。 政府が国有資産の売却などに取り組む行政構造改革実行本部の設置に動いたのは、この ままでは消費税増税に理解を得るのは難しいと考えたからだろう。民主党行政改革調査会がまとめた中間報告では、公務員宿舎の削減で少なくとも1400億円の財源の捻出を目指し、衆議院や参議院が保有する資産など国有財産の売却も進めるという。新たな組織を立ち上げ、国家公務員総人件費の2割削減、天下りの見直しなど効果をアピールしやすい行革に的を絞り、消費税増税の地ならしをする狙いが透けて見える。 だが、独法や特会の改革は本来、民主党のマニフェストの主柱ではなかったか。一般会 計と特別会計を合わせた国の予算約206兆円のうち70兆円を削減対象とし、無駄遣いの削減で9兆1千億円を捻出する計画だった。当時、自民党などは過大と批判したが、民主党は、こうした改革で子ども手当や高速道路無料化などの財源を捻出するとしていた。その真摯(しんし)な反省も国民へのおわびもなく、消費税増税にひた走る厚顔ぶりはあきれるばかりである。
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