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兵庫・明石の歩道橋事故:強制起訴初公判 元副署長、無罪主張「過失なかった」

神戸地裁に入る榊和晄被告=神戸市中央区で2012年1月19日午前9時22分、小川昌宏撮影
神戸地裁に入る榊和晄被告=神戸市中央区で2012年1月19日午前9時22分、小川昌宏撮影

 花火大会の見物客11人が死亡した兵庫県明石市の歩道橋事故(01年7月)で、神戸第2検察審査会の起訴議決により全国で初めて強制起訴され、業務上過失致死傷罪に問われた元県警明石署副署長、榊和晄(かずあき)被告(64)の初公判が19日、神戸地裁(奥田哲也裁判長)で始まった。榊被告は「警備本部でできることはやっており、過失はなかった。警備計画を作成する立場でもなかった」などと述べて起訴内容を否認し、弁護側は免訴か無罪、もしくは公訴棄却を求めた。

 榊被告は検察の捜査では4度にわたって不起訴となったが、09年5月の改正検察審査会法施行で導入された強制起訴制度が初めて適用された。そのため、事故発生から10年半を経て初めて法廷で裁かれることになった。

 弁護側は起訴内容の認否で、事故について「当時は認識されていなかった群衆雪崩という形態で発生した」と指摘。今回の強制起訴に至る手続きは同一事件で再度の申し立てはできないとする検審法の「一事不再理」に反しているなどとして公訴棄却を主張。さらに、同署の現場責任者で10年6月に同罪で有罪が確定した元同署地域官(62)との共謀はなく、刑事訴訟法上の時効が成立しているとして免訴されるべきとした。また、「被告は事故を予見できなかった」として無罪を求めた。

 指定弁護士は冒頭陳述で、夏まつりの警備本部副本部長という立場で明石署にいた榊被告が、署内のモニターや無線報告などにより、現場の混雑状況を確認できたと指摘。歩道橋の構造や前年末の花火大会の人出などから、雑踏事故の危険性を予見できた、と主張した。その上で、部下に対し観客の歩道橋への流入規制を指示すれば事故を回避できたと述べた。

 また、指定弁護士は、署長の指示で元地域官の代わりに市や警備会社との会議に出て事前計画に関わるなどしており、「過失の共犯」が成立すると主張した。共犯者の公判中は時効が停止するという刑事訴訟法の規定が適用され、被告も同罪に問えると説明するとみられる。

 初公判は午後も続き弁護側も冒頭陳述を行う予定。今年度中に第6回までの期日が正式決定しており、結審は秋以降となる見通し。

 兵庫県警の田中登士広報課長は「当時の関係職員が起訴されたことは厳粛に受け止めており、今後も雑踏警備に万全を尽くす」とコメントした。【渡辺暢】

 ◇明石歩道橋事故

 01年7月21日夜、兵庫県明石市の大蔵海岸で開かれた花火大会の見物客が、会場につながる歩道橋(長さ約103メートル、幅約6メートル)上に滞留。折り重なるように倒れて子ども9人と高齢者2人の男女計11人が死亡、183人が負傷した。県警は明石署、市、警備会社の計12人を書類送検、神戸地検はうち現場責任者5人(署1人、市3人、警備会社1人)を業務上過失致死傷罪で起訴し、全員の有罪が確定した。民事裁判では県警と市、警備会社に総額5億6800万円の賠償を命じた神戸地裁判決が確定している。

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 ◆起訴内容の概要◆

 榊被告は兵庫県警明石署副署長だった01年7月21日、明石市主催の「第32回明石市民夏まつり」の同署警備本部副本部長として同本部長(署長=死去)を補佐し、現地警備本部指揮官(署地域官=業務上過失致死傷罪で10年6月に禁錮2年6月の有罪確定)と雑踏警備計画を立て、当日も安全を確保する立場にあった。

 この日午後6時半ごろ、会場前の歩道橋に多くの来場者が流入して滞留し、放置すれば新たな人の流れと交錯して雑踏事故が発生する危険があると容易に予見できた。

 署地域官は現地で、榊被告は同署で、警備状況を的確に把握していた。2人は共同して事故を防止する注意義務があったのに放置するという過失の共同や競合により、事故を発生させた。

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 ■ことば

 ◇強制起訴

 検察が不起訴とした事件について、くじで選ばれた市民11人で構成する検察審査会が2度、起訴すべきだと議決した場合、強制的に起訴される制度。09年5月施行の改正検察審査会法で設けられた。地裁が指定した弁護士が検察官に代わって起訴し、公判でも検察官役を務めて立証、求刑などを行う。明石歩道橋事故で初めて適用された。これまでに、民主党元代表の小沢一郎被告が政治資金規正法違反罪に問われた事件と、沖縄県の投資会社社長が詐欺罪に問われた事件の公判が始まっている。

毎日新聞 2012年1月19日 大阪夕刊

 

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