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廿日市の細見谷林道建設:県、事業中止へ 環境保護団体は歓迎、地元戸惑い 厳しい財政事情で /広島

 西中国山地国定公園内の細見谷渓畔林(廿日市市吉和)を縦貫する幹線林道事業(約12キロ)について、県は19日の県議会農林水産委員会で、厳しい財政事情などを理由に中止する方針を明らかにした。事業を巡っては、ツキノワグマなど希少な動植物が生息し、西日本有数の生物多様性を誇る渓畔林を破壊するとして、環境保護団体などが反対していた。【矢追健介】

 計画は独立行政法人・緑資源機構(08年3月廃止)が全国で進めた大規模林道事業の一環。官製談合事件を受けた機構の廃止後、県は事業を継続するか検討を続けていた。

 県内の未着工の幹線林道事業は(1)比和・新庄線のうち三次市内の一部(2)大朝・鹿野線のうち戸河内-吉和区間(3)高尾・小坂線のうち庄原市と神石高原町内の一部--だった。

 県によると、(1)は継続するが、(2)と(3)を中止する。残事業費は(2)が約26億円、(3)が約81億円という。

 県産材生産増を10年計画で進めている県は、民有林を重点整備して効率化を高める「低コスト林業団地」事業を推進しているが、団地の面積比率は(1)が78%、(2)が22%、(3)が6%だった。県林業課は「厳しい財政状況の中で林道事業の主体は県であるため、民有林の生産拡大を優先する」と説明した。

 ■「当然の結果」

 細見谷渓畔林は、標高1000メートルを超える山々を縫うように流れる川沿いに広がる。戸河内-吉和未着工区間は、6キロにわたりミズナラやブナの林が連なる渓畔林を縦貫する形で計画された。ツキノワグマを頂点にオオタカやサンショウウオ、イワナ亜種のゴギなど豊かな生態系が保たれ、日本生態学会は03年に計画中止と自然公園法に基づく特別保護地区への指定(現在は第2種保護地域)を求める要望書をまとめた。

 一帯で自然観察を続ける環境NGO「広島フィールドミュージアム」の金井塚務代表は「当然の結果。ただし、特別保護地区への格上げがまだなど課題も残る。事業優先の考え方から、自然基調の考え方への変化を期待したい」と歓迎した。

 ■「林道は必要」

 細見谷川流域の西山林業組合の安田孝・副組合長は「まだ県から聞いていないが、一般論として林業のために林道は必要と思う」と話した。真野勝弘・廿日市市長は「非常に残念。林業振興や生活環境向上、森林の公益的機能維持・増進のために必要性は変わらないと考える」とコメントを発表した。

 これまで林業組合は、幹線林道建設に伴う受益者賦課(負担)金を旧緑資源機構に払ってきたが、実際には地元の廿日市市が補助金の形で肩代わりしていた。これまでに支払った補助金は約2800万円。金井塚代表らは肩代わりを違法と主張して広島地裁に返還を求める住民訴訟を起こしており、県の判断は、訴訟の行方に影響する可能性がある。

 ■各地の状況

 林野庁によると、旧緑資源機構が進めていた全国32路線のうち、完成は5路線。未完成区間を抱えた15道県のうち、北海道は完全中止。一部中止や事業規模の見直しをする県がほとんどだという。

毎日新聞 2012年1月20日 地方版

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