国際戦略総合特区の指定を受けた「関西イノベーション特区」。新薬開発や再生医療などの医療分野、充電池などバッテリー開発など6分野に重点を置き、関西の成長の起爆剤にする狙いだ。県内では神戸市の医療産業都市が進むほか、スーパーコンピューター「京」、大型放射光施設「スプリング8」など世界最高水準の研究施設が備わる。特区指定を受けて実現に向けたスピードが鍵を握りそうだ。(桑名良典、内田尚典)
指定に向け、兵庫、大阪、京都3府県と京阪神3政令市は初めて共同申請した。申請書によると、2025年までに医薬品・医療機器の輸出額を現在の約4倍の1兆600億円に、リチウムイオン電池や太陽電池などの生産額を約10倍の約5兆円にすることを見込む。
その一つ医薬分野。神戸市などは、新薬などを承認審査する医薬品医療機器総合機構(東京)の出張所設置や、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を利用した臨床研究手続きの特例などを求める。
ポートアイランド2期で進む医療産業都市の進出企業・団体は200を超える。本社を構える製薬大手・第一三共の研究子会社「アスビオファーマ」の横山誠一社長は「新薬審査の期間は海外が圧倒的に早い。韓国やシンガポールでは国を挙げて支援している」とし、迅速化に期待する。
施設面では、スプリング8に隣接するエックス線自由電子レーザー施設「さくら」が3月に、世界一の計算速度を誇るスパコン「京」が11月にそれぞれ利用が始まる。スプリング8とさくらを運用する理化学研究所播磨研究所の生越満企画課長は「特区指定で認知度が上がり産業利用が増えるだろう」と見込む。
関西の浮揚には一体的な取り組みが求められるが、大阪商工会議所のある副会頭は「特区の中身を具体化する過程で、自治体間で不協和音があるかもしれない」と懸念。「前向きに進むよう経済界が黒子となって支えていきたい」と話している。
(2012/01/19 08:20)
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