震災による液状化で入り口が破壊された住宅=2011年3月12日、埼玉県久喜市南栗橋地区で
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東日本大震災で液状化が発生した埼玉県久喜市で、家屋が半壊したり一部損壊した世帯を支援するため、市が独自に設けた住宅再建支援制度の利用が21%にとどまっている。被災者からは「工事費用が多額で市の支援金では足りない」「修理してもまた液状化が起きるのでは」など切実な声が聞かれるが、制度の使い勝手の問題もある。大震災から十カ月以上。生活の基盤である「住まい」に不安を抱く家庭が、首都圏にも残っている。 (増田紗苗)
昨年三月十一日、久喜市は震度5強に見舞われ、市北部の南栗橋地区で局地的な液状化が起きた。市の担当者は「原因は検証できていない」としながら、「もともと沼地で、利根川沿いの砂で埋め立てたところが多い」と説明する。
市によると、全壊や大規模半壊の世帯に最大三百万円が支給される国の「被災者生活再建支援法」に基づき、同地区では全壊十一世帯、大規模半壊四十一世帯が認定され、これまでに94%の計四十九世帯が申請を済ませ、修復工事を行った。
一方、半壊や一部損壊は同法の救済対象にならないため、市は昨年十月、対象から漏れた世帯に対し、住宅再建支援として上限百万円を支給する独自策を打ち出した。しかし、対象となる計百十九世帯のうち、申請は二十五世帯にとどまっている。受付期間は来年三月までだ。
南栗橋地区の被災者でつくる「復興の会」が実施したアンケートによると、「資金の工面ができない」「直してもまた傾くかもしれないので我慢する」など、補修工事をしない世帯もあった。
同会副会長の布川茂さん(62)は自宅が半壊と認定され、百万円を受けたが、住宅や駐車場の補修に計約四百三十万円かかった。「足りない分は貯蓄を取り崩した。もう少し支援があれば」と語る。
同市によると、支援金の使途は住宅補修に限られ、壊れた水道管や門扉などの補修には適用されない。このため「使い勝手が悪い」との声もあるという。
布川さんは「液状化被害に遭った千葉県浦安市などでは、再発防止策が検討されていると聞く。県内でも液状化防止に向けて協議を進めてほしい」と、根本的な対策を要望している。
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