電気料金制度を見直す経済産業省の有識者会議(座長・安念潤司中央大教授)は二十日の会合で、原発の長期停止で燃料費が大幅に増えた場合などに、電力会社が家庭向け電気料金に直接転嫁できる新たな仕組みを導入することで合意した。新制度は早ければ今春にも導入される。ただ、東京電力が現在検討している値上げは前提が異なっているため適用の対象外になる。
制度見直しの背景には、福島第一原発事故を受け全国の原発が相次ぎ停止。代替する形で火力発電所がフル稼働し、電力会社の燃料費がかさみ経営を圧迫していることがある。
電力会社は外国為替相場や原油、液化天然ガス(LNG)などの国際市況の影響を受けた燃料価格の変動は、自動的に電気料金に転嫁できる。しかし、原子力や火力など主要電源の比率が変わったことに伴う燃料費の増減を電気料金に転嫁するには、原価すべてを見直したうえで、認可を求めなければならなかった。
これに対し、新しい仕組みでは燃料費の増加分だけを計算して上乗せすることができるようになり、算出の手間を減らすことができる。有識者会議は、料金の原価を見積もる期間を現在の一年間から原則三年程度に延ばし、中期的な経費節減策を反映させやすくすることも決めた。
新制度では手続きが簡素化され、電力会社にとって一面では現行より電気料金への転嫁は容易になる。ただ、新たな仕組みを適用するには厳格な原価計算をしていることが前提となる。
また、今の制度では値下げは電力会社の届け出任せとなっている。値上げ手続きを簡単にする以上、値下げについても明確なルール作りが必要となる。
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